お前の隣は | ナノ

少しずつ

お互いの気持ちを分かり合ったあの日から、数日経った。
けど俺達はすぐには変わらない。

変わったことは、何故かちひろが倉持と仲が良くなったこと。

俺ほどじゃあないが、倉持もたまにちひろとメールのやり取りをしてるらしい。
別に倉持に取られるなんて思っちゃいないが、なんか気に食わない。

だからと言って関わるなとも言えない。
さすがにそこまで束縛する気はないし、俺の知ってる奴だしまあ大丈夫だろうから。

「ねぇ御幸」

「んー」

「今度練習試合あるんでしょ?」

「…倉持から聞いたのか」

「うん。でね、応援しに行くね。
そしたら御幸も喜ぶだろうって倉持も言ってたし」

「お前部活は?」

「その日は午前中だけなの。だから練習終わったら見に行く」

久しぶりに御幸の野球してる姿見たいから、なんて言われて今更浮かれる俺じゃないけど、正直なとこ嬉しい。

『わたしね、野球やってるときの一也くんがいっちばん好き!』

野球のことなんて全然分からないくせに俺が野球やってるのが一番好きとか、あの時は全然理解できなかった。
ずっと俺に気を遣って言ってる言葉だと思ってた。

「野球やってる時が一番活き活きした顔してるし、一番輝いて見えるから」

「要するに俺しか見てないんだな」

「ふふ、ほんと自意識過剰」

「ハハッ、図星なくせに」

あの日から日課になりつつある部活後の会話。
あんまり遅くなるのも悪いからと、短い時間しか話さないけどな。

まあ毎日こうして話していればすぐに噂になるわけで、純さん達に問い詰められる。
けど隠す必要もない。

「あぁ、俺の幼馴染ですよ。何なら紹介しましょうか?」

「なんだ、付き合ってんじゃねぇのか」

取られる気は更々ないから別に紹介しても何の問題もない。
なんて言ったら殴られそうだから言わないけど。

今までの俺だったら、絶対に紹介するなんて言わなかった。
まして幼馴染とも公言することもなければ部活後に直接会って話をすることなんてあり得なかった。

俺達は少しずつ変わってきてる。
お互い部活もあるしクラスも違うわけでいつも一緒じゃあないが、こうして、少しずつ俺達の時間を作っていく。
俺達の関係を広めていく。

遠回りしちまった分、互いに多少の免疫はついてるわけで、何も焦ることはない。
俺とちひろのペースで、ゆっくりと変わっていけばいい。

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