お前の隣は | ナノ

動き出す時間

「俺もお前に聞きたいことあるんだけど」

「ん?なに…?」

「好きな奴とかいないの」

「え…うん、いないよ?」

「ふーん。俺はいるけどなあ」

「…へぇ、そうなんだ。性格悪い御幸に好かれる人ってどんな人なんだろう」

軽く流しているように見えるけど、ちひろは動揺してる。
握ってた手が、一瞬強張った。

なんで強張ったのか。
…期待、していいんだよな?

「気になるなら教えてやってもいいけど」

「…ううん、別にいい」

「なんで顔逸らすんだよ、俺が他の奴に取られんのそんなに嫌?」

「…大丈夫、いつまでもこのままでいるわけには、いかないし」

そうさ、このままでいるわけにはいかない。
目を背けるのは今日でもうやめだ。

「ちひろ」

握っていた手を引っ張って呼び止めた。
そしてバランスを崩しながらも俺の方を振り返るちひろに、キスをする。

一瞬のことで目を丸くして呆然としてるちひろを見て、思わず笑いが出た。

「ははっ、間抜けな顔」

「…え、御幸、今の」

「ここまでして誰が好きか分からないなんて言わせねぇよ」

「…分かんない。ちゃんと、言ってくれなきゃ」

「あれそうくる?なら俺ももう一回聞いちゃおうかな。今度は嘘はなしな」

…ちひろの好きな奴は、俺だろ?
言い終えて二カッと笑って見せれば、普通相手は赤くなって照れるだろ。
なのにちひろの奴は照れることもなければ否定することもしない。

ただ一言、自惚れ過ぎと苦笑しながら言われた。

「というか、さっきと質問変わってるし」

「そこはご愛嬌ってことで」

「なにそれ。でも、それもご名答。
じゃあ今度は私から。
…御幸は私が好き、でしょ?」

「大当たり」

俺達は似た者同士。
それは小さい頃からずっと一緒にいたからかもしれない。
それはお互いがお互いのことを好きだからかもしれない。

理由はどうあれ、変わった告白のやりとりをした俺達の時間は、また、動き出した。

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