偽りない笑い

「…あ、もしかしてこれ、河原?」

「え…」

私の手紙をまた見だしたと思ったら、こっち見てその手紙をちらつかせてきた。
急に話しかけられて言葉に詰まってたら彩夏が代わりに対応してくれた。

「何言ってんのよ茜以外ありえないでしょ」

「いやいや、差出人も分からないのに判断出来るかっての」

「あ…そういえば…河原よりって書くの忘れてた…」

「え、もう何やってんの茜!」

「ご、ごめん…」

「…ぷっ、あっはっは!」

彩夏に頬軽くつままれてごめんって謝ってたら、急に御幸君が吹き出して笑いだした。

なんで笑いだしたのか分からなくておどおどしてしまってる私に彩夏がまた頬つまんできた。

「痛い痛いっ」

「おどおどし過ぎだって、これで緊張解れるでしょ?」

「痛いだけなんだけど!」

「くくっ、お前らほんと仲良いのな」

会話に入ってくるわけでもなく、ただ小さく呟いた御幸君。
一つ分かることは、あの笑いは嘘ではないってこと。

ほんとに我慢できずに吹き出したって感じ。

「あ、先生来た。んじゃまた後でね」

「うん。ありがと彩夏」

「…こうして見てりゃ普通の女の子なのにな。俺のこと嫌いだって以外は」

「え…」

彩夏とふざけ合って笑ってるのをずっと見てたらしい御幸君は、また呟くように言葉を発した。

なんか自嘲するようなこと言ってるけど、嫌味なのかな。
でも、別に御幸君のこと嫌いってわけじゃない。
そりゃ確かにそういう風なこと口走ってしまったけど、それは本心じゃないわけで…。
私はただ男の子が怖いだけで別に特別御幸君を嫌ってるわけじゃない。

もし傷つけてしまったのなら謝りたい、けど…。
な、なんて言えばいいんだろう。
そもそも話しかけられないのに…。

担任が話してる中で、うーんと項垂れて方法を考える。
そして結局、また紙に書くことにした。

サラサラと紙に書いてからふと思った。
書いたはいいけど、これどうやって渡せば…?
話せないから直接渡すとか出来ないのに。

…無言で渡されたら、変に思うよね。
でも私にはこの方法しかなかった。


二つ折りにした紙をサッと御幸君の机に置く。
それに気づいた御幸君は一旦私を見てからその紙を広げた。

そして紙を見た御幸君は、朝礼中ってのもあって控えめに、小さく吹き出して笑った。
さっき見たのと同じ、偽りのない笑いだった。

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