お手紙

「行ってきまーす」

次の日、彩夏との約束通り学校へ行くことにする。

やっぱりまだ手が震えちゃうけど、でも学校に着けば彩夏がいるから大丈夫。

登校中は誰かに話しかけられることなんてほぼないし、話しかけられたとしても女子だから大丈夫。

問題は、昨日彩夏から聞いた御幸君の言葉が本当かどうか。

「茜!」

「あ、彩夏…おはよう」

「おはよう、ちゃんと学校来れたんだね、偉い偉い」

「小学生じゃないんだからそんな褒め方はちょっと」

「あははっ、ごめんごめん」

上履きに履き替えて教室へ向かってる途中で、彩夏が迎えに来てくれた。
ぎゅーって抱き締めてくれるのがなんだか落ち着く。
信頼してるから、安心出来る。

「今日体育あるけど体操服持ってきた?」

「彩夏、ちょっと過保護というか心配し過ぎ。
さすがにそれは持ってきてるよ」

教室に着いて、彩夏はずっと私のそばに居てくれる。
御幸君の席に座って他愛ない話をしてくれる。

こうやって楽しい話をしてると、少し気持ちが楽になるから嬉しい。
多分それも分かっててこういう会話してくれてるんだろうけど。

「休み時間は出来るだけ、茜のとこくるからね」

「うん、ありがとう」

「…御幸君と話せそう?」

「…正直、分かんない。
けど多分いきなりは無理だと思う。
だから、とりあえずメモ帳にでも書いて謝っておく」

「ん、そっか」

直接話さないにしても直接渡すのも無理そうだってことで、机の中に軽く入れておくことになった。

とりあえずこの間のことを謝る。
御幸君は悪くないからって。

そして誰か来る前に、というか本人が来る前にさっと机の中に軽く入れた。
すぐ隣で読んでるのを見るのはちょっと気が引けたから、自販機にジュース買いに行くってことで教室を一旦出ていくことにした。


彩夏と一緒にのんびり歩いて戻ってくる。
教室に入れば、御幸君が自分の席で私の書いた端的な手紙を丁度見てるところだった。

「わ、さ、彩夏。私の書いた手紙見てるよ…」

「そりゃ見るでしょ机の中に入ってたら。見てほしくて入れたんだからビビらないの」

「だ、だって…」

これでまた話しかけられたら、私対応できないよ…。
そろそろチャイム鳴るけど一応ぎりぎりまで近くに居てくれるって言ってくれた彩夏が、私と一緒に席まで来てくれる。

自分の席の近くに来たとこで、御幸君が私に気づいた。
その顔はすごく驚いた顔だった。

「!」

「…」

「河原…」

おはようの一言でも言えればよかったんだろうけど、私は結局何も発せないまま席に着いた。
私の代わり、ってほどでもないけど彩夏が御幸君におはようって言ってる。

…御幸君は私に話しかける様子はない。
けどさっき見てた手紙をまた出して文面を見始めた。

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