親友の助け

学校へ行かなくなってから、3日が経った。
もちろん私は理由を母親に話した。

でも、少しだけ罪悪感もある。
せっかくお金出して行かせてくれてる高校なのに、このまま行かないなんて母親に申し訳ない。

それに…もし御幸君が本当にただ普通に友達として話しかけていたとしたら、私は御幸君を傷つけたことになる。
けど男の子の本心なんて分からないし、まず男の子が怖いからどうしようもない。

私が学校へ行かなくなってから、友達の日野彩夏と連絡を頻繁にとるようになった。
彩夏は私が男の子恐怖症なのを知ってる。
だからすごく心配してくれてる。

それだけで私は救われてる気がするし、彩夏に会いたいって思う。

今日も夜に電話がかかってきて、ずっと話し込んでしまう。

「大丈夫?茜」

「うん、ありがとう。
家ではお母さんしかいないから平気」

「そっか。
…まだ、来れそうにない?」

「…行きたい、とは思うんだけど」

常に私を気遣ってくれる彩夏は私の親友。
彩夏には、御幸君とのことで学校に来れなくなったことを話してる。
そして御幸君は何も悪くないことも。

全部、私が一方的に、しかも勝手に怖がってるだけだから。

「あ、そういえば…」

「どうしたの?彩夏」

「えっと…御幸君から、伝言頼まれた」

「え…」

「えーっと、"この間は悪かった。もう触れたりしねぇし嫌がるようなことはしない。近寄るなってんなら話しかけもしないから"だって」

電話越しに、彩夏から御幸君の言葉を聞いた。
その言葉はただの建前かもしれない。
嘘かもしれない。
自分のせいってのが嫌で、謝って学校に来てほしいだけかもしれない。

言葉なんて、すぐに嘘つけるからすぐには信用できなかった。

「…茜、信じれないんでしょ?」

「…」

「信じれないのは私はどうしようもないけど、この御幸君の言葉は本当だと思うよ。
私に伝言頼む時の顔すごく申し訳なさそうにしてたし、御幸君ってモテるし調子いいとこあるけど、悪い奴じゃないみたいだから」

彩夏の声は真剣そのもので、私を気遣って嘘ついてる声じゃなかった。
つまり御幸君は本当に、罪悪感を感じてるってことになるんだろう。

でも…。

「…茜」

「なに…?」

「厳しいこと言ってると感じるだろうけど、もう少し前を向いてみてもいいんじゃない?
私だって怖いものあるし、それに向き合うってすごく勇気いるけど、いつまでも逃げてちゃ前に進めないよ。
いい機会だし、少しずつでも前に進んでみない?私も手伝うし、苦しくなったら助けてあげるからさ」

彩夏の言葉は、今まで本音で向かい合ってたこともあってすっと胸の中に入ってきた。

少しずつ、前に。
いつまでも過去に囚われてても、いいことなんてないもんね。
そりゃまだまだ怖いし関わりたくないって思うけど、彩夏がついてるなら、心強い。

それに、このまま学校に行かないのもお母さんに悪いし…。
これ以上、心配かけるわけにはいかないもんね。

「…彩夏、私、明日学校行く」

「よしそうこなくっちゃ!
待ってるからね!茜!」

「うん、ありがとう彩夏!」

大丈夫。
いきなりハードル高いことするわけじゃない。
ただ、学校へ行くだけのスタートだ。

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