葛藤


手元に戻ってきた大事なお守りをしっかりと握りしめて安堵する。
こんなにすぐ返してくれるとは思ってなくて驚いたけど、でも本当に見つかってよかった…。
ちゃんと返してくれたわけだし、お守りと一緒に置かれた紙を無視するわけにはいかない、よね。

そっと内容を読んでみれば避けてる理由が知りたいと書かれてた。
…どうして、わざわざ聞いてくるんだろう。

御幸君の考えが本当に分からない。
私のことなんてもう放っておけばいいのに、どうして、まだ関わろうとするの…?

お守りを見つけてくれたのはすごくありがたいし、感謝もしてる。
でもそこまでしてくれる必要なんてないのに…。

そっと御幸君の方に視線を向ければ板書をノートに写してて、かと思えばシャーペンを置いてこっちを見てきて目が合っちゃった。
思わず視線を逸らしたけど…返事、待ってるよね…。

御幸君はちゃんと約束守ってお守り返してくれた、だから私も嘘偽りなくしっかりと返事を書いてそっと渡す。

…なんでだろう。
分かってることなのに、自分の言葉でもう関わらなくていいと書いた時、なんだか寂しさを覚えた。



よく分からない感情に困惑しているとすぐに返事が返ってきて、読んでみればそれは誤解だと書かれていて、机を叩かれたからちらりと視線を向ければ謝っているような仕草をされた。

誤解という言葉と謝罪の仕草に私の心は揺れる。

面倒だと、思ってない?
関わりたくないと、思ってない?

でもこんなまともに会話も出来ない私と関わっても楽しくないだろうし、周りに変な噂も立てられたりしていい事なんてないはずなのに。


…私、信じても…いいのかな…。


どうしたらいいのか分からずにじっと紙を見つめたままでいるとまた御幸君から紙を渡されて、その小さくちぎられたノートの切れ端には、私が悩んでいるのを見透かしたように無理に信用しなくていいと書いてあった。あとお守りのことも。

私、また気を遣わせてる。
思えばずっと、私は気を遣わせていたよね?
それでも御幸君は嫌な顔どころかよく笑いかけてくれて、口の利けない私と話をしてくれた。

もし、本当に御幸君が普通に私と絡みたかっただけだったら…私が今してることは御幸君を傷つけることになる。


もう一度御幸君の方へ視線を向ければもう私の方は見ていなくて、外を眺めていた。そしてその横顔はなんだか寂しそうに見えて…胸が痛んだ。

「…よし」

正直まだ御幸君を信じる決心はつかない。でも今の御幸君の顔は見ていたくなくて、私は紙に自分の思いを乗せて言葉を書いた。


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