伝わってくれ


[私は御幸君の親切心に甘えてただけだから
こんなめんどくさい人と絡みたくないに決まってるのに、それに気づけなくてごめんなさい
だから御幸君も無理に私と関わろうとしなくていいんだよ]


…なんていうか、なんでそんな考えになったんだよって思わず突っ込みたくなった。

いやまじでなんでそうなった?
俺そんなつまんなそうな顔して絡んでた?
それともお前傷つけるようなこと言った?

色々考えたけど本人に聞いた方が早いなってなってすぐに返事を書く俺。

[俺、そんな考えにさせるようなことした?
もしそうならそれは誤解、謝る]

文字だけで伝わるか不安だけど今は授業中だし喋るわけにもいかない。
俺も河原みたいに絵でも描ければ多少は伝わるんだろうけど生憎俺にそんな画力はない。

どうしたもんかと考えた末に、紙を渡して河原が内容を読んだことを確認してから軽く河原の机の端をシャーペンで叩いてちらりとこっちを見た時に『ごめん』とジェスチャーしておいた。

これで伝わってんのかは分かんねぇけど、俺にはこうすることしか出来なかった。

すぐに視線は逸らされたけどじっと紙を見つめだした河原。さっきみたいに悩んだように揺らぐ瞳。

多分俺のこと信じるか信じないか葛藤してんだろう。
まあおそらく信じてはくれねぇんだろうけど、少しは期待してもいいんだろうか。


俺けっこう授業中のやりとりとか好きだったんだけどなー。他愛ないことばっかだったけどつまんねぇ授業もおかげで乗り越えられてたし、河原の描いた絵を河原自身に置き換えて想像すんのも面白かったし。

けどもうこれ以上俺に出来ることはない。

まだ河原からの返事はきてねぇけど、これが最後かなーなんて考えながらノートちぎってまた文字を書いてそっと机に置く。


[無理に信用しろとは言わないから
けどまあもうお守りはなくすなよ、大事なものなんだろ]


もう河原の方を見ることはしない。その代わりに頬杖ついて俺はぼーっと空を眺める。


つうか俺、なんでこんな河原のこと気にしてんだろうな。
心のどっかでもう絡めなくなんの嫌だって思ってる。

…最初はそんなこと、全然思ってなかったのに。

いつの間にか授業中の河原とのやりとりは日課みてぇになってて、ほぼ無意識?に河原のこと見てたりもした。

俺と目線は合わなくても手紙読んでる時に小さく笑ってたり難しい顔してたり、まあ小さい変化だけどけっこう表情も変わったりする。

絡みだした時はそんな微かな変化もなかったけど最近はよく表情が変わるようになってたんだけどな。
仲良くっつうか打ち解けられてるって思ってたのは俺の勘違いだったのか。

「…」

空を眺めたままずっとそんなこと考えて声にならないため息を吐いて、ふと机に視線を戻したらまさかの河原からまた手紙が来てた。


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