返事を待つ


朝っぱらから八つ当たりで倉持に首絞められて死ぬかと思った。
首さすりながら自分の席にようやく着いたとこで、隣の河原が明らかに俺のこと見ないようにってか関わらないでってオーラ出してて、ほんと、俺だいぶ避けられてるらしい。

これじゃあいつまで経っても話なんて聞いてくれねぇな、なんて苦笑いしてから河原のお守りのことを思い出す。

…ほんとは河原がいない時にそっと返しておくつもりだった。
でもいい機会だと思って、卑怯かもしんねぇけどお守りを餌に河原に交換条件を持ち出した。

そりゃもう驚いた顔してこっちを見てくるもんだからやっぱやめときゃとかったかなって思ったりもしたけど、こうでもしなきゃお前は俺の話なんて聞いてくれねぇだろ。


すんごい迷った顔して俯いてたけどやっぱり相当大事なものみたいで、渋々紙を出しては文字を書いて俺に差し出してきた。


[話ってなんですか]


何かに怯えてるのか、紙を渡してきた河原の顔を盗み見れば強張った表情しててシャーペン握ってる手も力んでた。


[それはもちろん俺を避けてる理由について。
昨日、お互いのためとかなんとか言ってたろ、あれどういう意味?]


まあ、とりあえずは話してくれるみたいだし聞きたいことをさらっと書いて紙と一緒にお守りも返してやった。


目の前に自分のお守りが返ってきたのを見て、おもむろにそれをぎゅっと握りしめてはほっとした顔してる。
やっぱ話すための餌に使ったの、ちょっと罪悪感あるかもなあ…。


少しして左手でお守り握ったままようやく俺が書いたこと読む河原。
そして困惑したように揺らぐ瞳。なんて書こうか迷ってんのかシャーペンは止まったまま動かない。

俺は急かすわけでもなくただただ河原がちゃんと話してくれるのを待つ。

とりあえずいつの間にか始まってた授業の板書をノートに書き写すけど教師の話は耳に入ってこない。

そろそろ返事書いてくれたかなーってもう一度河原の方を盗み見れば、目が合った。
ハッとしたように視線を逸らす河原は小さく深呼吸をして、観念したようにゆっくりと紙に文字を書き始めた。

少ししてそっと俺の机に置かれた紙を受け取って、俺はその内容を読んでいった。


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