悪戯な笑み



いつもより早めに家を出た朝。

昨日は御幸君に話しかけられた件もあって、放課後にすぐに家に帰ってしまったからお守り探し出来てないし。

無くしてからもう数日経ってるし見つかりっこないって諦めもある。
でもどうしても諦めきれなくてまた探しに行く。

朝早い時間帯の学校は朝練してる部活生がほとんど。
だから校舎内探すのにはうってつけの時間だった。


「ない…」


やっぱりいくら探しても見つからなくて、次第に登校してきた生徒も増えてきて、ゴミと思われて捨てられた可能性も考え始める始末。

もう時間もないからと仕方なく教室へ戻って自分の席へ座る。
自分の机を見つめては最後にお守りを見た時を思い出してみるけど、その辺りはもう既に探し終わっていてもう打つ手がない状態だった。


「おい御幸!待てコラ!」

「いでで!いや俺悪くないだろさっきのは!」

「…っ」


少しして教室の外から聞こえてきた声にびくりと体が跳ねる。
そうだ、昨日…私逃げ出して…。

隣の席、気まずい…な…。


彼と目が合わないように何もない机の上をじっと見つめたまま動かないようにする。

早く、早くホームルーム始まって。
祈るように心の中で呟いて掌を握りしめる。



…目の前を御幸君の影が通り過ぎる。
そして席に着いた音がする。

話しかけては、こないみたい。
よかったとホッと安堵した瞬間にあっ、そういえばって隣で呟く声がして、じっと見つめてた机の上に御幸君の腕が伸ばされた。


「ん」

「えっ…」


いきなりで反射的にまたびくりと体が跳ねた。
でも視線は、御幸君の手に釘付けだった。


だって、御幸君の掌には私のお守りがあったから。


「あ…こ、れ…」

「誰かさんの落とし物」


見つけて、くれた…?


なんで、って思ったけどとりあえず返してもらおうと受け取ろうとしたら、お守りを持っていた御幸君の手はすっと引かれた。


「これを返して欲しくば、俺の話を聞かれたし」


予想外の展開に思わず御幸君の方を見やれば、お守りを顔の横でぶら下げて子供のような、ニタッと悪戯っぽい笑みを向けられた。


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