お守りの在処

逃げられた。
やっと話す機会が作れたってのに、結局河原はちゃんとした理由も話さずに行ってしまった。


『…もう、関わらないって…決めた、から…お互いの、ために…』


お互いのために関わらないだって?
全く意味わかんねぇんだけど。

もしかしてだけど、河原のやつなんか勘違いしてんじゃねぇの。
けど、まともに話してくれないんじゃ確認しようがない。

「はー…どうすりゃいいってんだよもう」

ベストアンサーなんて俺にはわかるわけなくて、もやもやした気持ちのまま練習に行くしかなかった。



「御幸先輩、早く俺の球受けてください」

「んな急かさなくても受けてやるっての」

「一球でも多く投げたいんです」

今日も相変わらず投げることしか頭にねぇのなコイツ。
まあ、コイツの球、うわの空で受けてられるほど甘くねぇし俺も気を引き締めていかねぇとなー。
河原のことは、今は考えてる場合じゃない。


「あの、貴子先輩、」

「ん?何どうしたの春野?」

「これ、誰かの落とし物みたいで…見た感じ、女の子のものだと思うんですけど」

「三つ葉の、キーホルダーかあ。まあさしずめファンの子の落とし物じゃない?」


やる気満々の降谷を横に黙々と準備をしてたらマネージャー達の会話が聞こえてきた。
いつもならただ聞き流すだけなんだけど三つ葉のキーホルダーっていう言葉に俺は反応した。

「あーそれ、俺のクラスに同じの持ってる奴いるわ。多分そいつのだと思うし俺が返しとくよ」

「御幸先輩のの知り合いのなんですか?じゃあお願いします」

「はいよ。
…で、これどこに落ちてた?」

「え?そこのブルペンのフェンスの外ですけど…」

「…へぇ。ま、これは俺が責任もって持ち主に渡しとくから」


受け取った手作りのキーホルダー。
…間違いない、これは河原のだ。


なんでこれがブルペンのとこに落ちてたのか。
河原がここまで来たって証拠ではある。
けどなんでこんなとこに来たのかまではわからない。

ここ最近までずっと携帯につけてたよな確か。
てことは落としたのは最近。
俺のこと探してた、ってわけではなさそうだけど、でもじゃあなんでこんなとこに来る必要があるんだ?

「御幸先輩、早く受けてください」

「あーもう分かった分かった今から行くっての」


もやもやした気持ちに更にもやもやがかかったまま、とりあえず預かったお守りをカバンにしまってから練習に打ち込んだ。

明日、河原の机の引き出しにでも入れとけば気づくだろう。
多分あいつ、これ無くして不安でいっぱいだろうし朝練終わったらすぐ教室いかねぇとな。



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