大事なものは

「どうしよう…」

「…とりあえず戻ろ、授業始まっちゃうし…ね?」

「…うん」


一大事が起きた。
私のお守り、クローバーのお守りがなくなってしまった。
最近不安でずっと携帯に付けてたからか、いつの間にか落としてしまったみたい。
休み時間になって、私は彩夏と一緒に職員室まで行って先生に落とし物がないか聞いた。けど届けられてないと言われて、休み時間も終わってしまうからとりあえず教室へ戻ることになった。


どこで落としたんだろ…朝起きて、いつものように学校の門の前で確認したとこまでは覚えてる。
けどそれから時間は経っちゃってるし…教室にいないようにしてたからあちこち行ってて探すのも一苦労。


でも、あれがないと不安で仕方ない。
私を守ってくれる、お守りのクローバー。

授業が始まっても全然頭に入ってこなくてどこで落としたのかずっと考えてた。

あ、もしかして無意識に筆箱の中にしまってるんじゃないかな…そんな淡い期待を抱いて筆箱を開けてもお守りのクローバーはなかった。けどその代わりに二つ折りにされた小さい紙が入ってて、なんだろうと思ってそれを手に取る。
広げてみるとそこには見慣れた文字が書いてあって、名前が書いてあったけどそれを見なくても誰が書いたのかはすぐに分かった。

どうして?
もう友達ごっこは終わったんじゃないの?

考えても考えても分からないままで、久しぶりに、隣を盗み見た。
目が合っちゃうかもと思ったけど今日の御幸君はいつか見てたのと同じ野球に関する大事なものを見ていて私の視線に気づかなかった。


放課後…。

放課後は、無理だ。
お守りを探さなきゃいけないから。
あれがないと不安で仕方ないから、まともに御幸君の話聞けないから。

「…」

ちゃんと断らなきゃって思った。
でも今は授業中で、御幸君は真剣な顔してるし…邪魔、出来ない。

でも、どうしてこんなに私のこと気にするんだろう。
もう関わらなくて済むようになったはずなのに…やっぱり、まだ罪悪感あるのかな。それならちゃんと、言わなきゃいけないのかな。




午後の授業は御幸君のことばかり考えてた。少しだけだけど、クローバーのこと忘れてた。
たったそれだけだけど、大事なお守りのクローバーを落としたことを忘れてしまうくらいに私の中で御幸君の存在は大きくなっていく。

…でも、やっぱり御幸君よりもクローバーの方が今は大事で、途中から私は心当たりのある場所のリストを作り始めた。
だから放課後のことはすっかり忘れてしまってた。

放課後になって、御幸君に呼び止められるまで。


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