吹っ切れた

「おい御幸、お前ら喧嘩でもしたのかよ」

「お前らって、誰とのことだよ」

「とぼけんじゃねぇ河原とだよ」

「…俺にもわかんねぇよ」

「はぁ?」

分かるわけないだろ、あの日から急に避けられてんだから。
まあ俺がまた何かしたんだろうけど、全然見当もつかねぇし。

理由聞こうとして、授業中俺から紙渡したら読まずに返されるし、ただ事じゃねぇって思って書き換えて渡したら今度は机の中にしまわれた。

そこまでされたら、これ以上俺から問い詰めることなんて出来るかよ。

河原の中で整理ついてねぇのかと思って待ってもみたけど、結局何も言ってこなかったんだ。


…なあ、俺が何したって言うんだよ。

もやもやしたまま日は過ぎて、考えないようにしようとしても隣の席じゃ嫌でも目にするし無意識にまた考えちまうし…。


「お前さあ、そんなに気になるなら直接聞けよ」

「何の話だよ」

「隠してるつもりかよ、見え見えなんだよ気になってんの」

「…んなこと言ったって聞けるわけないだろ、だってあいつは」

「男恐怖症、だからか?お前それ理由にして逃げてるだけだろ。
どうするかなんてお前の勝手だけどよ、後悔する選択だけはすんじゃねーぞ」

「…」


何も反論出来なかった。
逃げてるわけない、そう思ったけど今までの自分を振り返ると言葉が出なかった。

そりゃまた俺のせいで学校来なくなるってのは嫌だ。だから慎重にはなってる。
でも倉持の言う通り、そう言って自分を守ってるように聞こえなくもない。

…今思えば、河原は俺と関わろうと積極的だった。自分なりに男恐怖症を直そうって努力してた。

けど俺はどうだ。
河原の顔色ばっか気にしてずっと受け身だった。
無意識にまた拒否されるのを恐れてたのかもしれない。

…そんな柄じゃねぇだろ、俺。
思ったことは言う性分だろ。

いつまでも気になってもやもやしてるくらいなら、元々好かれない性格だし思いきって聞けばいい。

めんどくせぇこと考えんのはやめた。
受け身になんのもやめた。

吹っ切れたらなんか気持ちが幾分か軽くなった気がする。
倉持のおかげ、かな。礼なんて言ってやんねぇけど。


…今河原は教室にいない。
だから俺は、どうせまた見ねぇだろうけど気休めでもいいから河原の机にある筆箱に小さなメモを入れておいた。


[放課後にちょっと話がある。御幸]


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