放っておけない

ここ数日、河原の様子が変だ。
けど何かあったか聞いても何もないって言うし、原因であろう核心をついても誤魔化して話してはくれない。

まあ恐怖対象である男に悩み事相談する方があり得ないんだけど。

でも河原の奴、大丈夫なのか?
日に日に元気なくなってるっていうか、やつれてるっていうか…。

「河原さん、そこの男子に呼ばれてるよ」

「…うん」

まただ。

また男に呼び出されてる。
憂鬱そうな顔、してんな。

「…そんなに気になるのかよ」

「は?」

「最近、河原のことばっか見てんぞお前」

「そう?
まあでも、気になるっちゃ気になんのかなあ」

「んだよその曖昧な答え」

「はっはっは」

…気になる、か。
確かに気にはなる。
けど俺が心配とかしたところでしてやれることねぇしなあ。

「んだよ御幸、お前河原のこと好きなのかよ」

「ふはっ、何倉持クン、ヤキモチ?
俺が河原に取られそうで焦ってる?」

「なっ…気持ち悪いこと言うなっつーの!」

「いてて…手加減ねーな」

思いっきりぶん殴られて頭擦ってたら、えーっと、河原のお友達の日野がやってきた。

「ねぇ、ちょっといい?」

「…ちょうどよかった、俺もちょっと話したいと思ってたとこ」

話したいことは日野も多分河原についてだ。
とりあえず隣の席に座ってもらって、日野の話から聞くことにする。
すげー真剣な顔で俺のこと見てきて、若干怒ってるようにも見える。

俺なんかしたっけ…。

「…率直に聞くけど、最近茜がよく男子に呼び出されるようになったのって御幸君のせい?」

「は?」

倉持みたいに河原のことが好きなのか聞かれるのかと思ってた。もしくは最近河原に異変がないか聞かれるのかと思ってた。けど日野の質問は元凶が俺じゃないかってこと。

呆気にとられて思わず声が出ちまったけど、何そのふざけた話。
一回俺のせいで不登校になったってのに、また同じようなことするほど馬鹿じゃない。ましてそんな低レベルなことはしない。
けど日野の目は真剣で、本気で聞いてるってのは察した。

「…あの、さ、俺がそんなことして楽しむような奴に見える?」

「…まあ、見えないけど」

「んじゃ答えは出てんだろ、次こっちの質問。
日野は河原が男恐怖症ってのは知ってんだろ?最近の河原の様子、やばいんじゃねぇの」


…日野は何も言わなかった。ただ、少し辛そうな表情になる。
何かしてやりたくてもしてやれねぇんだろうなってのは、すぐわかった。

まあ、どうせ河原の奴が強がって大丈夫って言い張ってんだろ。

「ちょ、待てよ御幸!
男恐怖症って、マジで言ってんのかよ」

「ああ、倉持は知らないんだっけ。
そうだぜ、河原は男嫌いじゃなくて怖いだけなんだよ、これ他言禁止な」

「マジかよ…」

「…わり、ちょっと用事思い出した」

「…茜のとこ、行くんでしょ」

「さあ、どうだろうな?」

普段の俺ならこんなことには首を突っ込まない。クラスメイトでも。
けど、河原に関しては違った。

これがただの気まぐれなのか、罪悪感からなのか、倉持の言う通り好きという意味で気になるからなのか、今の俺には分からなかった。

原点はどうあれ、放っておけないという理由だけで今の俺の体は動いた。


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