話しかけ方

野球は詳しくないけどこんな私でも分かるくらいにレベル高いというか、ハードそうな守備練習。

男の子は怖いけど、こうやって何かに打ち込んでる姿を遠くから見るのは嫌いじゃない。
青春、ってのは好き。
関わるのが怖いだけだから、見るだけなら平気なんだ。

「試合、見てみたいな」

「え…茜どしたの、なんか別人みたい」

「そんなことありませんー」

じろじろと私を見てくる彩夏を無視して無言で練習風景を眺めた。

普通に皆上手いと思う。
その中でも特に上手いのが多分レギュラーの人なんだろうな。
三年生が多い、当たり前だけど。

「あ、ほら御幸くんあそこだよ茜」

「…」

彩夏に促されて、御幸君の方を君を見る。

…当然だけど、すごい真剣だった。
他の皆だってそう。

「…帰ろう、彩夏」

「え、もう?」

「うん。皆すごい真剣だし、練習終わるまで見てても今の私じゃどうせ話せないし」

「…まだ話せそうにないの?」

「…話そうとは思うんだけど、声が出なくて」

そう、さっきももう帰るって言うつもりだった。
でも咄嗟のことで声が出なくてただ突っ立ってるだけだった。
そんな私に笑いかけて行ってしまった御幸君。

こういうのって、私に気があるからすることだよね。
でも、そんなのあり得ない。
御幸君が、私のこと気になってるなんて。

多分、特に意味はないんだと思う。
ただの気まぐれなんだと思う。

たまたま、席が隣だったから。
きっとそう。

強いて言えば、罪滅ぼし。

「…茜」

「なに…?」

「茜はさ、私と話したりする時何考えてる?」

「え?
何って、別に何も考えてないよ。
強いて言うなら、話の内容とか?」

「じゃあ、御幸君と話そうとする時は?」

「…なんて話そうとか、どんな顔すればいいんだろうとか、御幸君は何考えてんだろうとか」

「ちょっとストップ」

帰り道、急に彩夏によく分からないこと質問された。
なんでこんなこと聞くんだろう。
そんなこと考えながら正直に答えてたら言葉を遮られた。

「今度は何…?」

「あのね、茜は色々考え過ぎなの。
御幸君と話す時も私と話す時みたいにさ、何も考えなくていいんだよ。
茜は御幸君を意識し過ぎてるの。
普通の友達との会話するみたいに、何気ない感じでいいんだよ」

「そ…そんなこと、言われても…」

「いい?
まずは顔を見ないで話してみよ。
私に話しかけるみたいに話すの」

彩夏に話しかけるみたいに、顔を見ずに何も考えずに御幸君に話しかける…?

そんなの、急になんて出来ないよ。
でも、彩夏の言うことは一理ある気がする。

私は意識し過ぎてるのかもしれない。
警戒し過ぎてるのかもしれない。

御幸君が特に意味はなく気まぐれで私に話しかけているのだとしたら、私も同じように意味はなく言葉を返せばいいのかもしれない。

文面では普通に話せるようになってるんだ。
それをただ、言葉にするだけ。

「…彩夏」

「うん?」

「多分出来ないだろうけど…や、やってみる」

「よっし!
じゃあ明日チャレンジだね!応援するよ!」

「う、うん」


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