分からない

「うぅ…男の子ばっかり」

「当たり前でしょ何言ってんの」

「でも、女の子もいっぱいだね」

「まあ野球部有名だしモテてるからね」

彩夏の後ろにぴったりくっついて、おずおずと野球部グラウンドへ来た私。

さっきから男の子の声があちこちで響いてる。
来て早々だけど、早く、帰りたい。

「御幸君…どこだろう」

「あそこの人だかり出来てるところだと思うけど」

冷静に話しながら指を差す方向を見てみれば、女の子の人だかりが。
なんで人だかり出来てるところに?
そんなこと思ってる私に答えを示すかのように、わーきゃー騒ぐ女の子達。

「もしかして、ファンの子なのかな」

「もしかしなくてもそうでしょー」

遠くから、確認してみる。
確か御幸君はキャッチャーやってるって言ってた。
えっと、防具?を付けてるから顔は見えないけど、多分あれが御幸君だと思う。
女の子達もその人見てるし。

「…帰ろう、彩夏」

「え、もう?
全然見てないじゃん練習」

「なんか、耐えられない。
このわーきゃー言う雰囲気」

「まあ、茜がもういいならいいけど」

こんな人だかりがいたら御幸君と目が合うことなんてあり得ないし、第一目が合ったら合ったで話せないから反応に困る。
野球のことは詳しくないから何とも言えないけど、普通に上手いんだろうなってのはなんとなく分かった。
だからもう大丈夫。

「なーんだつまんないの、御幸君に話しかけるのかと思ったのに」

独り言みたいに呟いて歩いてく彩夏。
つまんないって何…。

さっさと歩いていく彩夏を追いかけて帰ろうとしたところで、声をかけられた。

「おーい河原ー!」

「っ!?」

「こっちだこっち!」

「御、幸くん…」

「ははっ、まさかほんとに練習見に来てくれるなんてなー」

「あ…え、と…」

「ちょうどいいや。
今から実践的な守備練習だからさ、俺の格好いいとこ見てけよ」

「え…あの…行っちゃった…」

もう帰る、それだけ言うにも声が出なくて、御幸君はさっさと行ってしまった。

「もう茜!今度は何見てんの」

「み、御幸君がこっちに来て…練習、見てけって」

「え?」


…どうして?

周りには他にもたくさん女の子いるのに、どうして私にだけ話しかけたの?
こんな、まともに会話すら出来ない私に…。


「…もう少し見てく?練習」

「…どうしよう」

「せっかくだから見てこうよ、御幸君にも見てほしいって言われたんでしょ?」


そう、確かに言われた。
だから、彩夏の誘いもあって結局もう少しだけ練習を見てくことになった。

でも練習を見てけと言った御幸君の真意は分からないままだった。

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