さぁ
今回もやって参りました
体育祭、文化祭に続く楽しい楽しい一大イベント
中間テスト。
「…お前達」
試験週間に入り、下校時間も早くなった校内の一角
1年7組。
静まり返る教室には4人の生徒。
自分の席で頭を抱えているのは、我等が野球部の頼れるキャプテン・花井。
横で苦笑いをしているのは西広大先生。
そして、地べたに正座し
熱い眼差しで2人を見つめる田島と三橋。
「…で、この期に及んで試験範囲を間違えていたと。君達はそー言うのかね?」
あまりの衝撃にキャラまで変わってしまった花井。
それは、ほんの10分前。
真剣な面持ちで7組の教室にやって来た2人は、人目も憚らず花井に土下座し、前回の試験範囲をもう一度勉強していた事に昨日気付いた事を告げたのだ。
ちなみに、阿部と水谷は放心する花井の横を抜け、さっさと帰宅した。
西広を7組に呼んだのは、彼らのせめてもの情け。
面倒事を押し付けたとも言う。
「やー…でもまぁ、間違えてたのが英語だけなら、今からでも何とかなるよ。ね?」
間違えていたのが1教科だけなのは、不幸中の幸い。
まぁまぁ、と現実逃避を始めた花井を宥める西広。
「英語は明日の朝イチだぞ!?コイツらの頭でどーやったら間に合うんだ!!」
ついに発狂し始めた。
「ごごご、ごめ、なさ…」
「ごめん!!」
さながら蛇に睨まれた蛙の様に謝罪する三橋。
方や簡潔に謝って勝手にスッキリしている田島。
「…諦めなよ、花井」
教室に差し込む穏やかな夕陽を眺め、現実に目を背けめくるめく架空ドリームランドへ旅立とうとする花井を西広が引き戻した。
「とりあえず…今日は徹夜だなぁ…」
「三橋ん家泊まれる!?」
「いっ、え、ヘーキ…!」
ピコピコと携帯をいじり始める三橋。
親に許可を取っているのだろう。
「じゃーテキトーに何か買ってこっか」
「オレら奢ります!!」
「オレっ、も!」
謝罪とお礼の気持ちを込めて奢りを買って出る2人。
「いやーそれは悪いよ」
「西広。そのくらい受けてもバチは当たんねーぞ」
「そだぞ!悪いのカンペキオレらだから!」
「奢りっ、ます!」
タダで徹夜に付き合わせるのも後味が悪い。
2人はガンとして譲らない。
「そーぉ?じゃーお言葉に甘えて」
「おう!何食いたい!?」
「そーだなー。ロッテとマックだったらどっちのマックにする?」
「………」
「………」
「選択肢…ないよな」
「てりたまの季節だね」
秋風が似合う涼しい顔で言ってのける西広。
いい性格をしている。
「2人共」
固まる3人に振り返って、西広は言う。
「今夜は寝かさないよ?」
月並みな殺し文句である筈の台詞が死刑宣告に聞こえたのは
決して気のせいではない。
西広先生最強説浮上。
[*前] [次#]
[
Book Mark]