天気予報では確か、寒波の到来は来週とか言ってなかったっけ。
「……さ…っ」
「「むーーい!!!」」
一際強い風が吹いた時、どちらからともなく声を上げた。風に遊ばれた髪の毛が頭上で踊っている。
ポケットに手を突っ込んで仲良く身を縮こまらせながら歩く沖と西広は、駅前のスポーツ用品店へと向かっていた。使い込んで傷んでしまった西広のグローブを修理する為だ。沖は場所を知らない西広の付き添いである。
マフラーを口元まで巻き上げて顔面をガードするものの、露出した肌を刺す冷たい北風は容赦なく攻撃を続けてくる。歩いているだけでライフポイントを削られる感覚はRPGで言えばステータス『毒』状態だ。
「う〜、オレ冬はニガテだ…」
「オレもー…」
「西広冬生まれじゃん」
「カンケーないでしょ」
冬生まれは寒さに強いと勝手に決めた沖を一蹴する西広。暑さに弱い夏生まれも居るのだから、そんなものは何の信憑性もない迷信である。
黙っていると余計寒さがきつく感じるので、自分が誰と同じ誕生日だとか、明日使える無駄知識だとか、どうでもいい話題を次から次へと出し合うが結局どの話題も長くは続かず、話は途切れてしまう。
そこで目的の店の近くまで来た所で西広がコンビニを発見し、何か買おうと沖を誘う。
「ねえ、何かあったかいもん買おうよ」
「えー、もうすぐ着くもん。さっさと用事済ませようよ」
「おごるから」
「よし行こう」
西広の一言を聞き二つ返事で踵を返した沖は早足でコンビニへ向かった。現金な奴だなコノヤロウ、と笑いながら西広も後を追う。
中に入るとそれはもう極楽で、二人の顔はほう、と間抜けに緩む。もう少し暖まりたい所だが、暖まった分だけ外に出た時つらくなるので、西広はさっさと二人分のホットレモンティーを持ってレジへ向かった。
「252円になります」
「はーい…あ。ねえ、2円ない?」
「ん?多分ある」
ピッタリの金額を払いたいのか西広が尋ねると、沖はポケットから財布を取り出して1円玉2枚を差し出した。
「あいよ」
「サンキュ」
袋には入れずそのままで商品とレシートを受け取り、片方のレモンティーと一緒に『これもあげるよ』と言ってレシートも手渡した西広。全く必要ないゴミを渡された沖は『全然要らない』と笑いながら突っ返す。
くだらないやり取りが何より楽しい年頃である。二人がふざけ合いながらコンビニを出ると、向かいの通りにパトカーが停車していた。周りには警官も何人か集まっていて、日常ではないその様子は一際公衆の目を引いた。
「事故かな」
「ね。警察屋さんが集まってる」
はい?
沖が放った一言に振り返った西広はぶはっと盛大に吹き出した。
「あっははは!な、なんだよ警察屋さんって!」
「え、言わない!?」
「言わない、フツー言わない…っ、ふっ、うはははっ!」
小さい子が言う『おみせ屋さん』みたいな言い方がツボに入ったらしい西広は、こらえようともせずに爆笑している。沖も釣られて笑うが顔は真っ赤である。自分は普通だと思っていた呼び方を笑われて、少なからず恥ずかしいらしい。
「はぁ…、はー笑った…あ、沖」
ひとしきり笑い終えた西広が、涙を滲ませながら沖の目元に手を伸ばした。
「めめにゴミ付いてる」
「ぶっ」
沖の目に付いたゴミを払ってやると、今度は沖が吹き出した。
「めめって!めめってなに!あははは!」
「はっ、つい!」
妹の言葉に合わせているんだろうか。油断した西広が"目"の事を"めめ"と言ったのを、沖は仕返しとばかりに笑い飛ばす。
「あっはっは!かわいーっ!なに、手は"てて"ってゆーの!?」
「うるさいなー!沖だってちっちゃい頃言ってただろー!」
くだらない事で人目もはばからずに笑い合う二人は、いつの間にか寒さなどものともしていない。
吹き荒ぶ北風も、愉快で幸福な笑い声の前に敗北を喫したようだ。
日毎厳しくなる寒さも、仲間と居れば何の事はない。
いつでも いつまでも
こうして笑い飛ばしてしまえばいい。
ネタ提供@チーズ抹茶様
ひっさびさに書いたからキャラが迷子だよ。
沖と西広は、二人だと全く遠慮の無い関係だったらいいなという妄想をチーズ抹茶様から頂いたネタとブレンドしてみました。警察屋さんてめっちゃカワイイやんけ!と悶えた結果がコレです。
あとは…文章力だよ…大体目的地行ってねーし…
二人がチャリでなく徒歩なのは…パンクでもしたんじゃないですかね。
すいません。精進します。
チーズ抹茶様、ネタ提供ありがとうございました!
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