ハロウィン当日の昼休みに、各クラスからお菓子を根こそぎ強奪した9組トリオ。
部活前のベンチにて満足げにお菓子の山を広げ、練習に使う体力を補給する。
「たいりょーたいりょー!」
「オレ、コレ スキ…!」
「ハロウィン様々だなー」
「餌付けって言うんだよ、ソレ」
大量に巻き上げたお菓子をかっ食らう3人を見て、溜息を吐きながら栄口がぼやく。
「クラス中の微笑ましい視線が痛かったよ」
「オレちょっと恥ずかしかった…」
「面識ない奴らからも貰ってたもんな」
西広、沖、巣山までもが呆れ気味に口を開いた。
どうやらお菓子を常備している部員は水谷と篠岡だけだった為、全員イタズラ被害に遭ったらしい。
手に入れたお菓子は、面白がった他クラスの生徒達からの募金の様だ。
「でも先生達が1番お菓子くれたよな!」
「職員室まで行ったのかよ!?」
田島の一言に、花井が悲鳴の様な声を上げた。
「だって本来オトナから貰うもんだろー?」
「イヤそーだけど!」
「オレは止めたぜ」
泉がしれっとした顔で述べた。
だがこの様子では、恐らく本気で止めてはいない。
花井は泉をキッと睨んだ。
「いーずーみー」
「やー、先生達も案外ノリノリだったし」
「そーゆー問題じゃねぇ!」
「カリカリすんなよ。ラスク分けてやっから」
「うぅ…」
チョコ味ラスクを1枚手渡され、涙目でかじる花井。
西広がよしよし、とうなだれる花井を慰めている。
「いーから早く平らげろよ。練習始めんぞ」
練習開始まではまだ時間はあるものの、部員はとりあえず全員揃っている。
さっさと練習を始めたいと言わんばかりの阿部は3人に向かって言った。
「おー!ちょっと待ってな!」
そう言ってペースを早めた9組トリオ。
その時、阿部が影を背負って口角を上げたのを、3人は知る由もない。
「「「ごっそーさんでしたー!!」」」
そして、見事に大量のお菓子を平らげた3人。
満足げにゴミを片付け、立ち上がる。
そこで阿部と水谷が3人の前に立ちはだかった。
「全部食い終わったな?」
「1つ残らず、ね?」
3人は意味が解らず、首を傾げる。
阿部ならともかく、水谷までもが黒い笑みを浮かべている異常事態。
いち早く真意を悟った泉が逃走体勢に入るが、
「ちょーい待ち」
巣山に止められた。
「……マジ?」
「超・マジ」
田島と三橋はまだ気付いていない。
そして、えげつない程に爽やかな笑みを浮かべた阿部と水谷が、ついに口を開く。
「「Trick or Treat?」」
それは、無駄に発音の良い死の宣告だった。
「お菓子くんないと…」
「イタズラ、だったね?」
事前に打ち合わせでもしたのだろうか。
栄口と西広も乗っかった。
そして既に空になったお菓子の山。
もう3人に身を守る術はない。
「や…あの…」
「ぅ…ぁ…」
まさかの形勢逆転に田島と三橋も青ざめていく。
「ハロウィンだからね」
「覚悟はいーかぁ?」
ニッコリと微笑んだ沖と花井。
7対3の完璧なる包囲。
もう、逃げ場はない。
「「「ギャーー!!」」」
夕日が美しいグラウンドに響く断末魔。
3人は、今日も1つ大人の階段を登ったのであった。
<イタズラは程々に!!
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