Happy Halloween!! 1



ゲンミツに!!>



「「「トリックオアトリートぉ!!」」」




頭の悪そうな発音がとある教室に響く。

花井は早々に現実逃避を開始した。

ここは1年7組。
元気な三重奏を奏でたのは、包帯らしき白い布で体中をぐるぐる巻きにした三橋。
オレンジ色のカボチャ帽子を被った田島。
長く黒いマントを羽織った泉。

もうお約束である。


キラキラと輝く瞳で花井を見詰める3人組。
花井は額を押さえた。
現在、クラス中の視線が自分達に集まっている。
花井の心を羞恥が満たす。

穴を掘ってでも入りたい。

阿部は普段なら読みもしない教科書に視線を落とし、他人の振りをしている。

すると、水谷が声を掛けた。


「…何やってんの、泉まで」


田島ストッパーである泉までもがノリノリな、尋常でない事態に水谷はまだついて行けてない。
水谷の質問に泉は呆れ気味に答えた。


「何言ってんだ、今日ハロウィンじゃん」

「ハロ ウィンっ!」

「そだぞ!タダでお菓子食い放題の日だぞ!!」


さも当然、とでも言いたげな3人。
確かに日付は10月31日。
だが、これは本来子供のお祭りである。
高校生にもなってそれはどうだろうか。

ちなみに、衣装は全て浜田に作ってもらったらしい。


「そんな訳で、お菓子」


ニヤリと笑いながら手を差し出す泉。

水谷は感付いた。
この笑みはお菓子が欲しいのではない。


「しょーがないなー」


溜息を吐きながら、鞄から袋を取り出す水谷。


「オレも食うから半分だけね」


そう言って差し出したのは、某お菓子メーカーの新作チョコレート。


「おー!やったー!」

「チョコっ!」

「ちっ、持ってやがったか」


チョコだチョコだ、とはしゃぐ2人をよそに、舌打ちをする泉。


やはりか。




「はーなーいー」




めでたく水谷から戦利品をぶん取った3人は、ターゲットを花井に変えた。

花井がソロソロと脱出しようとしている所を目敏く見つけ、声を掛ける。


「お菓子ー」

「くれ!」


ガッチリと花井をロックした子供達。
花井は焦った。
普段から花井はお菓子など持ち合わせていない。

うぐ、と息を詰まらせると、再び泉がニヤリと笑う。


「持ってねんだな?」

「う…」

「残念だ。極めて残念だ」


それはそれは楽しそうに溜息を吐いて首を振ると、


「田島、三橋」

「おうっ!」


まるで獲物に襲い掛かる肉食獣の様に花井を見据える9組トリオ。

そして、




「とっつげきぃー!!」


「ギャーーーー!!!!」




7組の教室に響く断末魔。


「ぎゃはっ!やめっ!やめてー!!」


花井が受けたのは、強烈なくすぐりの刑だった。


「あっはっはっは!!」

「花井よえー!!」

「ふひっ…ひっ」

「くそー…」


若干涙目の花井の様子に満足したのか、3人は新たなターゲットに狙いを定めた。


「あーべー」

「持ってねーよ」


アッサリと簡潔にお菓子を持ってない事を告げる阿部。
だが、花井の無惨な姿を目の当たりにしても余裕の態度だ。


「じゃー阿部も…」

「待て泉!コイツにくすぐり効かねんだ!!」

「ハァ!?変態だな!」


謂れのない罵声を浴びせられ、眉をしかめる阿部。

くすぐりが効かないのならどんなイタズラをしてやろうかと相談する3人。
そしてイタズラが決まったのか、くりっと阿部に向き直り泉は言う。


「阿部、悪く思うな」

「ンだよ」


ギロリと泉を睨むと、ソロソロと三橋が近付いて来る。


「阿 部くん…」

「なに」

「負けんな三橋!」

「日頃の恨みを晴らすんだ!」


阿部の威圧に竦み上がった三橋にエールを送る2人。
そして、大きく息を吸い込んだ三橋は




「ごめんなさいっ!!」




後ろ手に持っていた黒板消しを、勢いよく阿部の顔面に叩き付けた。




「よくやった三橋ィ!!」


「お前頑張ったよ!!」




咳込む阿部の横で抱き合い、見事逆襲を遂げた三橋の勇姿を讃える田島と泉。




「てめェらぁ〜〜…!!」




額にくっきりと青筋を浮かべ、阿部がユラリと立ち上がった。
三橋は漆黒のオーラに当てられ、ヒィィィと悲鳴を上げる。


「三橋を怒んな!!」

「お菓子持ってねーのがワリーんだ!!」

「うるせェガキ共!!」


阿部は白くなった顔や頭など関係ない様で、とりあえず1番近くに居た田島にウメボシをお見舞いした。

痛い痛いと泣き叫ぶ田島。
アワアワする三橋。

ウメボシを免れた泉は2人の横を通り抜け、新たなターゲットの元へ歩み寄った。


「しのーかー」

「あはは…グミだけどいい?」

「おー懐かしー!サンキュー!!」


篠岡から渡されたのは懐かしのコーラグミ。


「グミゲット!!」

「おー!!」

「おーっ」


泉がグミの袋を掲げると、阿部から解放された田島も目を輝かせる。


「次どこ行く!?」

「さんっ 組!」

「おっしゃ!突撃ー!!」


人様の教室で散々暴れ回った台風は、次のターゲットの元へ向かうべく廊下を走り去った。




「ヤキューブは賑やかだなー」




事の一部始終を目撃していたクラスメイト達のいい笑い者となった7組野球部員達。

そして、彼らは逆襲を決意する。




「このまんま終わると思うなよ…」




9組トリオは忘れていた。


7組には、絶対に敵に回してはいけない大参謀が居る事を。



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