二宮さんに義理!チョコ

〜二宮さんに義理!チョコ〜


どうするか最後まで悩んでいた。
渡すべきではないとは思っている。けれど、たくさんお世話になっているのは確かで。


悩みに悩んだ末、春は二宮隊室の扉を叩いた。


「お、お疲れさまでーす…」
「春か。どうした?」


恐る恐る中に入ると、1人ソファに座る二宮がいた。他には誰もいない。内心で頭を抱えた。


「あー…」
「………」


どうしたものかと困ったように笑うと、二宮は静かに立ち上がった。そしてすっと春に近付く。

身の危険を感じた。


「に、二宮さ…」


目の前にきた二宮の腕が伸び、とんっと背後の壁に手をつかれる。流れる動作で顔が近付くが、いつもと違うことに気がついた。


「…二宮さん、本気じゃないですね…?」
「……どうしてそう思う」
「んー、なんて言うか、前と感じが違って。前はグイッて感じでしたけど、今のはふわって優しかったです」
「擬音しかねぇな」


小さく笑った二宮に、春も微笑む。今の二宮になら、普通に渡せる。そう思い、春はラッピングされた袋を差し出した。


「二宮さん、これ」
「?」
「二宮さんにはたくさんお世話になったので、受け取って下さい!」
「本命か」
「義理です!」
「冗談だ。本気にするな」
「…二宮さんが冗談なんて…」
「なら本気の方が良いか?」


くいっと顎を持ち上げられ、流石に焦る。


「じょ、冗談の方が良いです…」
「太刀川の野郎がうるさそうだしな」


すっと離れた二宮にほっと息をつく。からかわれていると分かっていても、誰が見ても整っている顔立ちの二宮に迫られるのは心臓に悪い。


「春」
「は、はい!」
「ありがとうな」
「…はい!」


優しく微笑んだ二宮に、春は笑顔で返事をした。

1度は二宮隊として世話になった隊長。あの頃に二宮隊として行動していたのは今では良い思い出だ。今の自分になるまでの、大切な過程だった。

だから、二宮には本当に感謝している。


これからもよろしくお願いしますと、春は満面の笑みを向けた。


→太刀川さんに本命チョコ

[ 8/29 ]

[*prev] [next#]