陽介と秀次に義理チョコ

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〜陽介と秀次に義理チョコ〜


「おーい紅葉ー」


学校でもボーダーでも聞き馴染んだ声に、紅葉は振り返った。


「陽介、秀次。防衛任務？」
「ああ」
「終わったとこだぜ」
「そっか。お疲れ」


2人とも特に疲れていなさそうだが、一応そう声をかける。そして毎年のごとくチョコを差し出した。


「ちょうど良かった。はいこれ」
「お！チョコじゃん！さんきゅー紅葉」
「…すまない」
「いや秀次、そこはありがとうだろ」
「あ、ああ、そうか。紅葉、ありがとう」
「そ、そんな改めて言わなくても…毎年恒例みたいなものだし」
「そのお陰でオレは毎年チョコ0個から逃れてるからな！」
「………」
「………」
「お前ら同じ目で見るなよ！」


哀れんだような2人の瞳に見つめられ、米屋は膨れる。


「モテるやつにオレの気持ちは分かんねぇんだよ！」
「公平も秀次もモテるからね」
「俺が？」
「俺がって…だってチョコ貰ってるでしょ」
「いや、断っている」
「何でだよ！」
「…いつも紅葉から貰えるから他はいらないだろう。俺はそんなにチョコは食べない」


今度は紅葉と米屋が同じ目をして三輪を見つめた。とても呆れた目で。


「なんだ」
「いや、えっと、秀次？そういう問題なわけ？」
「他に何がある」
「…何って…わたしのは完全に義理なんだからわたしのを断って良いのに」
「紅葉は毎年くれると分かっているのに断るのは悪いだろ」
「それは有難いけど…」
「秀次が断った中でどんだけ本命がいたんだろうなー？」
「ちょっと、それ何かわたしが悪いみたいなんだけど」
「そんなこと言ってないぜ？」
「顔が言ってる…にやにやしないでよ！」
「オレに怒るなよ。元はと言えば秀次だろ？」


むーっとする紅葉に米屋はけらけらと笑った。


「紅葉が本命渡してるとか思ってる奴もいるのかもな」
「は！？」
「あ、秀次じゃなくてオレだったり？」
「か、勘違いしないでよ！別に深い意味なんてないから！ただの義理だから！恵んでるだけだから！」
「ぶはっ、ちょ、テンプレ台詞…！」


紅葉の反応に米屋はお腹を抑えてけらけらと笑う。それに紅葉はどんどんと不機嫌になっていく。


「もう良い。来年からは陽介にはあげない」
「は！？ちょ、待て待て紅葉はやまるな？」
「うるっさいばか！来年は秀次にも用意しないから秀次は他の子の断らないでよ！」
「あ、ああ…」
「オレにはくれよ紅葉ー」
「やだ」
「ホワイトデーちゃんとお返しするからよー」
「とか言って去年はお返し忘れたからランク戦で良いかとか言われたの忘れてないから」
「…そ、そうだっけ？」
「………」


紅葉はじとっと米屋を睨んだあと、何も言わずに踵を返した。しかし米屋が紅葉に縋り付く。


「いやマジで紅葉からのチョコ嬉しいなー！来年も貰えるの楽しみだなー！」
「知らない！」
「マジでマジで！ホワイトデーちゃんとお返しするから！」
「……はぁ、じゃあお返しちゃんとしてたら来年考えてあげる」


離れない米屋に溜息をつきそう言うと、米屋はようやく離れた。そしてよっしゃー！っと喜んでいる。


「…秀次にも用意するけど、ちゃんと他の子のも受け取ってあげてよ」
「…そんなにいらないんだが」
「気持ちだけでも受け取ってあげないと可哀想でしょ」
「紅葉も本命に渡して受け取って貰えなかったらショックだもんな？」
「うるさい！」


茶化す米屋に吠えたあと、唸る三輪に苦笑しながら2人に別れを告げた。

ホワイトデーがどんなものでも忘れられていても、結局はお世話になったからと来年もチョコを渡すんだろうな、と自分に呆れながら。


→犬飼先輩と辻に義理チョコ

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