玲と友子に友チョコ
〜玲と友子に友チョコ〜
いつも隊室にいないことを知っている。だから自宅へいかなければ渡せないと思っていたが、対戦ブースで目的の人物2人を見つけ、紅葉は歩み寄った。
「玲、友子」
「あら?紅葉ちゃん」
「どうしたの?」
「2人がこんなとこにいるなんて珍しいね」
「ええ、たまにはこうやって戦わないとと思って」
「だからあたしが玲の相手をしてたんだよ」
「どっちが勝ったの?」
「うふふ」
「………」
「あ、うん、分かった」
「紅葉ちゃんも良かったら私とランク戦しない?射手としては紅葉ちゃんとランク戦したことな…」
「やらない」
即答する紅葉に、那須はくすくすと笑った。熊谷は呆れる。
「あんた、本当にランク戦嫌いよね」
「別に嫌いってわけじゃないけど…」
「無理強いは出来ないから大丈夫よ。また今度相手してね?」
「……気が向いたら」
鳥籠のえげつなさを知っているため、少し対策を考えたいなどと思っている辺り、やはりランク戦は嫌いではなくなっていると思った。
(対策方法…聞いてみようかな)
そんなことを考える紅葉に、那須は笑みを浮かべた。前とは少し変わったな、と。もちろん良い方へ。その原因を思い浮かべ、そこであることを思い出した。
「紅葉ちゃん、後で隊室に寄ってくれる?」
「え?良いけど…なに?」
「今日はバレンタインでしょ?だから紅葉ちゃんにもチョコ作ってきてあるの」
「もちろんあたしもね。紅葉も玲ももっと太らないと心配でしょうがないから、たくさん作ってきたのよ」
「友子は控えた方が良いんじゃない?」
「…紅葉、ブース入る?」
「やーだ」
「そうよくまちゃん。紅葉ちゃんとは私が先ね」
話の趣旨がズレていることに気付き、紅葉は2人にチョコを差し出した。
「後で隊室には行くけど、とりあえず先に渡しとくよ。2人に、と、友、チョコ…」
何故そこで照れるんだと思いながらも、那須も熊谷もチョコを受け取った。そして嬉しそうに笑いかける。
「ありがとう、紅葉ちゃん」
「ありがとね。でもあんたあたしを太らせる気?」
「い、いらないなら良いよ」
「いるわよ。ちゃんと食べるからそんな顔しないの」
「わっ」
ぐりぐりと撫でられて視線をそらしながらも大人しくされるがままになる。お互いに顔を見合わせて笑った那須と熊谷に、紅葉はじとっとした視線を向けた。
「なに…」
「何でもないわよ。それより、紅葉は大事な大事な本命に渡しに行くんでしょ?」
「な、ほ、本命なんて…!」
「ふふ、紅葉ちゃんったら顔真っ赤ね」
「あ、赤くない!」
「あたしたちのときみたいに素直に渡しなさいよ?」
「紅葉ちゃんからならきっと喜ぶから」
「………」
からかっているわけではなく、本当に心配して言ってくれているのが分かる。だから反論しづらい。紅葉はうっすらと頬を染め、無言で頷いた。
「じゃあ後で隊室にね」
「うん。他の人にも渡し終わったら行くよ」
「それじゃあくまちゃん、もう少しやってかない?」
「はいはい、玲が満足するまで付き合うわよ」
仲の良い2人に紅葉は笑った。いつか自分も、隊に入り、同じ隊の仲間とこんなやり取りをしたいな、と。
→荒船先輩と村上先輩に義理チョコ
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