光に友チョコ

二宮連載夢主
〜光に友チョコ〜

この寒い時期、どうせバレンタインなど関係なくいつものように隊室のこたつでゴロゴロしているのだろうと思った。

そして影浦隊の隊室を訪れると、案の定こたつに身体を半分以上埋めてる仁礼。紅葉は小さく溜息をついた。


「よー紅葉!こたつ入るか?紅葉ならアタシのこたつに入れてやるぞ?」
「……じゃあ」



寒い中でのこたつの誘惑に勝てるわけもなく、溜息をついたものの、紅葉はそっと仁礼の私物化されたテリトリーのこたつへ足を入れた。その暖かさに思わず顔が緩む。


その瞬間、カシャっとシャッター音が響いた。驚いて視線を向けると、いつの間にかに身体を起こしていた仁礼が紅葉に向かってスマホを向けていた。恐らくそれで写真を撮ったのだと眉をひそめる。


「…光」
「よっしゃ!紅葉のゆる顏ゲット!これまた出水たちに自慢してやろっと」
「ゆる顔って…ていうか、撮るのは良いけど見せるのはやめてよ」
「何言ってんだお前は!こんな可愛いショットを自慢しないわけにゃいかねーだろ?」
「いや意味分かんないし」
「悔しがるあいつらの顔がまた見物なんだよ」
「へー」


何故だか嬉しそうにする仁礼に、まあいいかとこたつ布団を引き寄せた。確かにこれは身体ごと入れたくなる。


「それで紅葉?アタシに何か用だったのか?」
「あ、そうだ。これ渡そうと思って」


近くに置いた鞄を引っ張り、中からラッピングされた袋を取り出した。そしてすっと仁礼に差し出す。

そっぽを向いたままの紅葉に、仁礼は首を傾げた。


「…ば、バレンタインだから。と、友…チョコ…」
「友チョコ!?」
「わたしは…その、光のこと、友達、だと思ってる、から…」
「紅葉…!」


仁礼はチョコを受け取ると、感動のあまり紅葉に抱きついた。紅葉は大人しくしたままぎゅーぎゅーと抱きしめられる。


「なんだよ紅葉ー!お前本当に可愛いやつだなー!」
「べ、別に、光のためだけ作ったわけじゃないから…!」
「しかもテンプレツンデレ台詞とか!お前はアタシを萌え殺す気か!」
「何に興奮してるのか分からないんだけど…」
「良いんだよ!紅葉は分かんなくて!」
「……まあ、光が喜んでくれたなら良いよ」


小さく笑った紅葉に、仁礼は満面の笑みを返した。


「ありがとなー!紅葉ー!」
「はいはい、どういたしまして」
「ホワイトデー楽しみにしてろよ!」
「…やっぱりバレンタイン用意してないんだ」
「忘れてたな!」
「お世話になってる影浦先輩たちぐらいには渡しなよ」
「アタシがお世話してやってんだよ!」
「北添先輩ならバレンタインのお返したくさんくれるんじゃない?」
「!」
「絵馬も律儀だし」
「……」
「影浦先輩も何だかんだお返しくれそうだよね」
「…よし!今からチョコ買ってくる!」
「うん、いってらっしゃい」


単純な友人に呆れながら笑った。
自分の気持ちにどこまでも素直な仁礼には少し憧れている。自分もここまで素直になれれば良いのに、と。


「紅葉も行くか?」
「いや、わたしは他の人にもチョコ渡しに行くから」
「そっか!ちゃんと本命にも渡せよー?」
「う、うるさい。本命なんか、べ、別に…」


途端に女子の顔をした紅葉に仁礼はにやりと笑った。こういう表情をするときは、いつも相手は同じで。


「ま、とにかく頑張れよ紅葉!アタシはいつでも応援してるからな!」
「…うん。ありがとう」
「じゃあな紅葉!チョコありがとうな!」


仁礼は素早くこたつから出ると、紅葉を残して隊室を出て行ってしまった。
影浦隊の隊室に1人残された紅葉。
誰が戻ってきてもあの3人なら特に気まずくなることもない。もう少し温まってから出ようと、紅葉はこたつに身を埋めた。


→玲と友子に友チョコ

[ 20/29 ]

[*prev] [next#]