新ちゃんに義理チョコ
〜新ちゃんに義理チョコ〜
「新ちゃんみーつけたーーーー！」
「！？」
何かから隠れるように隅に座り込んでいた辻を見つけ、海は何の躊躇もなく声をかけた。大袈裟にびくりと反応する。
「…あ、海…先輩…か。よ、良かった…」
「なになに？新ちゃんってば私に会いたかったの？」
「出来れば誰にも会わずに隊室へ行きたかったです」
どこか疲れた表情の辻に首を傾げる。しかしまあ良いかと深く気にすることもなく、海は市販のチョコと手作りの小さなチョコを差し出した。
その物にまた辻はびくりと肩を跳ねさせる。
「え…？」
「？新ちゃんどーしたの？」
「あ、いえ…どうしてチョコを…」
「どうしてってバレンタインだよ！大切な心の友にチョコあげないわけないじゃん！」
「…………………あ、そうか、海先輩は女性か…」
「…………ん！？なんかよく分からない酷い言葉聞こえたんだけどどういうことかな！」
「…いえ、こちらの話です」
海からすっと視線を逸らした辻を疑問に思いつつも、まあいいかと再度チョコを差し出す。
「頑張ってる新ちゃんには焦らさずに手作りチョコもあげるよー！」
「…ありがとうございます」
「匡貴さんへあげるチョコの余りだけどね！」
「二宮さんにチョコ作ったんですか？」
「うん！もちろん！」
「…俺はてっきり、海先輩は身体にチョコ塗って二宮さんに私を受け取って下さいとかバカなこと言うかと…」
「新ちゃんまで何てこというの！ダメだよそんなこと言っちゃ！ていうか私そんなに変態じゃないよ！みんなして酷い！」
プンプンと怒る海に対し、辻は小さく笑った。そしてチョコを受け取る。
「すみません、海先輩。ありがとうございます」
「？いーえー！どういたしまして！」
いつも通りに戻った辻を疑問に思いつつ、素直なお礼の言葉ににかっと笑った。
「それじゃあね新ちゃん！私はまだまだ渡す人多いから！」
「あ、あの海先輩、よければ一緒に隊室まで…」
「またねー！」
「ちょ、海せんぱ…」
辻の言葉を最後まで聞くことなく、海は廊下を颯爽とスキップして行った。
1人残された、女子が苦手な男子を背にして。
→ひゃみちゃんに友チョコ
[ 12/29 ][＊prev] [next＃]