隠岐孝二17巻登場記念!@


「隠岐先輩隠岐先輩!」
「んー?春ちゃんどしたんや?」
「隠岐先輩!今日放課後何かご予定ありますか?」


昼休み、子犬のように駆け寄ってきた春に隠岐は表情を和らげる。自分の名を呼びながら走ってくる姿には尻尾が見えるようだった。相変わらず可愛い、と笑顔で迎える。


「放課後に予定は特にないで?まあ本部には行こう思てたけどな」
「じゃああの、少し付き合ってくれませんか…?」
「お、積極的やなぁ。ついに春ちゃんから告白してくるやなんて」
「はい!お兄ちゃんへのプレゼント買いに行くのに付き合ってほしいんです!」
「………イコさんの?」


からかうように発した言葉を華麗に流され、聞き返した隠岐の言葉にぶんぶんと首を縦に振る。
真っ直ぐで馬鹿正直な所は似ているが、それ以外は似ても似つかない。そんな春は兄が大好きで。春と知り合えたのも生駒のお陰だが、会話が生駒のことしかないのには少し不満だ。


「イコさんにプレゼントって何で?」
「この前、お兄ちゃんに似合いそうなものを見つけて!でも、その…そこが男の人のお店やから、1人じゃ入りづらくて…」
「ああー、なるほど」
「だから隠岐先輩!付き合って下さい!」


廊下のど真ん中で勢いよく頭を下げた春に周りの視線が集まる。兄譲りの大きな声。こんな場所でそんな大声など人目を集めるに決まっている。それに言葉が言葉だ。


(これ完全におれが告白されてるみたいやんか…)


本当にそうならどれだけ良いことか。
はぁっと小さく溜息をつきながら目の前の頭を優しく撫でた。春はばっと頭を上げる。


「ええで。他でもない春ちゃんの頼みやからな」
「本当ですか!ありがとうございます!隠岐先輩!」
「おれも買い物好きやし、春ちゃんとデートやと思えば最高やで」


笑顔で見上げてくる春ににこりと微笑む。最高に甘い笑顔で。これでころりと落ちてくれれば良いが、やはり予想通りとはいかず、ふにゃりと微笑み返された。


「えへへ、隠岐先輩とデートなんて恥ずかしすぎてまともにお話出来なくなっちゃいます!」
「え…?」


またも予想外の言葉にきょとんと見つめた。


「隠岐先輩イケメンですからね!お兄ちゃんいつも言ってますよ!」
「そら嬉しくないわ」
「イケメンって言われるの、嬉しくないんですか?」
「イコさんに言われても嬉しくないわ。それにおれ別にイケメンやないからなあ。イケメンや言われるより、春ちゃんにお兄ちゃん言われた方が…」


そこまで言ってぴたりと言葉を止める。自分は何を口走っているんだ、と。あまりにも春がお兄ちゃんお兄ちゃんと言うものだから、自分もそんな風に嬉しそうに呼んでほしいと思ってしまったのだ。その気持ちがそのまま言葉に出てしまう。普段では絶対にやらない失態だ。苦笑いしながらちらりと春に視線を向けた。


「あー、春ちゃん、今のは気にせんと…」
「お兄ちゃん…?」
「…!!」


こてんっと首を傾げながら呟いた春に、全身が一気に熱くなった。ばっと口元を抑える。


「ちょ、ま、待ってぇな…!いきなりそらずるいやろ…!」
「え?だってお兄ちゃんって呼ばれたいって…」
「いやまあそうなんやけど…!そうやなくて…!」
「??」
「……はぁぁぁ…もうええわ…。…うん、今はそれでええよ」
「隠岐先輩…?」
「それでええんやて。ほな春ちゃん、イコさんへのプレゼント買いに行くんやろ?…お兄ちゃんが付き合ったるから、はよ行こか」
「…!はい!よろしくお願いします!お兄ちゃん!」
「…こらアカンわ…」


赤くなる顔を隠すように逸らしながら手を当てた。落とすよりも、自分がどんどんハマっていく。そんな状況も楽しいかもしれないと、隠岐は嬉しそうに笑う春の頭を撫でた。

今はまだ、このままで。


End

ーーーーー
隠岐くんをお兄ちゃんと呼びたい!!!って思いと隠岐先輩と呼びたい思いから…!コミックス発売前に書き終わったけどまさかの買い物好きってのに驚いて少し書き変えました…!買い物好き可愛いかよ…!
イコさん妹にしちゃいましたが、妹なら関西弁やん!って思いました←
でもでも敬語だし誤魔化せたはず…!(?)
ほらだって海くんだってほぼ関西弁ないし!
と、とにかく!コミックス登場おめでとう!!

[ 23/29 ]

[*prev] [next#]


back