誕生日を祝ってみる〜初級編!〜


「さあ!実践形式でやってみようか!」
「…はあ」
「そんな不安がらなくても大丈夫だよ!新ちゃん!」

不安気に見つめてくる新ちゃんの背中をぽんぽん叩いた。私がついてるんだから心配することないのに!


「てことで、まずは初級編ね!」
「初級編…結構続くんですね」
「一回でマスター出来るなんて思っちゃダメだよ!」
「…はい」


甘い甘い!
匡貴さんを満足させるためにはかなりのスキルアップをさせてあげなきゃプレゼント出来ないからね!


「というわけで、最初のターゲットはあの子ね!」


私が本部の廊下を歩く桐絵ちゃんを指差すと新ちゃんはピシリと固まった。やっぱりいきなり実践形式は緊張するのかな?


「今回のテーマはバレたときの誤魔化し方だから、尾行はバレても大丈夫だよ!だからあんまり気張らないで気楽にやろう!」
「い、いえ、あ、あの…っ、お、俺にとっては既に上級編なのですが…!」
「確かに桐絵ちゃんは気配に敏感だけど、大丈夫大丈夫!上手くやれば尾行だってバレないから!」
「そ、そういうことではなくて…」
「さあ!尾行開始!バレたときの言い訳は考えといてね!フォローはするから!」
「ちょ、せ、先輩…!」


こんなに焦る新ちゃん初めてだね!
そんなに緊張することないのに!私がいるから安心して!っという意味を込めて肩を叩いた。
…何故か深い溜息をつかれたんだけど!
あ、緊張が解れたのかな!なら良かった!

そして私と新ちゃんは桐絵ちゃんの尾行を開始した。



「桐絵ちゃんは強いけどアホだから初級編だと思うんだよね!」
「…そ、そう、ですか…」
「新ちゃん?ちゃんと桐絵ちゃん見なきゃダメだよ!私に頼りっきりじゃスキルアップなんか出来ないからね!」
「…で、ですが、直視するのは…その…」
「ん?」


新ちゃんの様子がいつもと違う気がする。
いつももっとしっかり喋るはずだけどなー?
そんなことを考えて余所見をしていたら、私たちの前に影がさした。

角に身を隠してしゃがんでいた私たちは見上げる形になるわけで…


「アンタたち、何してるのよ」
「あ、バレちゃった」
「!!!」


あっさり桐絵ちゃんにバレちゃった。
でもでも今回はここからが本題だよ!アホな桐絵ちゃんを誤魔化せばミッション成功!

新ちゃんの言い訳に合わせようと新ちゃんの方を向いたら…


「匡貴さん!!」


その後ろに匡貴さんの姿を見つけちゃった!
嬉しい!もうこれは愛のチカラだね!新ちゃんのスキルアップが終わるまで会うのは我慢しようかと思ってたけど、会っちゃったなら仕方ない!匡貴さんに声をかけないなんて選択肢はない!


「匡貴さーーーん!!」


私はすぐに立ち上がって匡貴さんの元に走り寄った。


「!!ちょ、ま、待って下さい先輩…!」


新ちゃんのめちゃめちゃ焦った声が聞こえた。でもこれも試練だよ!私なしでも乗り越えなきゃいけない壁だから!


「新ちゃんごめんね!私は匡貴さんに愛を叫ぶっていう緊急ミッションが発生しちゃったから!だから後は1人で頑張って!」
「すみません、先輩…お願いなのでここにいて下さい…!」


縋るような目と声で新ちゃんが私を誘惑してくる…!
くぅ…っ!可愛い…!確かに可愛い…!レアだから余計に…!でも…!でも…!!


「ごめんね!新ちゃん!新ちゃんのことは大好きだけど、私は匡貴さんを裏切れないから!匡貴さんラブだから!!」
「せ、先輩…!」


私は振り返らずに全力で匡貴さんの元へ走った。


その後、散々匡貴さんに構ってもらってから戻ったら、新ちゃんは1週間ほど口を聞いてくれなかった。

初級編、結果!
たぶん失敗?次はちゃんと最後まで新ちゃんについててあげよう!


(新ちゃーん!)
(………)
(新ちゃん!?)
(………)
(あーあ、あれは辻ちゃん相当怒ってるね)
(辻が怒るって、あの人一体何したんすか…)
(さあ?よっぽどのことだろうけど)
(…この調子で二宮さんの誕生日まで間に合うのかな…)
(間に合っても間に合わなくても、最後はあいつを誕プレって渡しとけば良いでしょ)
(いや、まあそうなんですけど……それじゃ辻のこの特訓の意味って…)
(まだまだ楽しめそうだね)
(新ちゃんお願いだから何か答えてよーー!!)
(………)


→中級編

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