BがLな高山さん西野さん5
2021/10/23 13:49



BがLな高山さん西野さん4の続きです。
ちょと長め。休みながら、ね。

───────────

「そ、うなんや...」

彼女と別れた。
そんな言葉を聞いて、上手く言葉が出ない西野くん。もちろん、心の中では大喜びして飛び跳ねてるなんて、口が裂けても言えないよね。

「ほかに、好きな人ができたって言われてさ。
それで、その、好きな人っていうのが、なぁくんなんだ、」

「あ!俺は正直未練とか無いし!全然平気なんだけど...そのー、なぁくんの連絡先が知りたいって言われて」

言わなきゃという使命感に突き動かされる高山くん、“なぁくんの恋に繋がるなら...ッ”と自分を押し殺す、良いヤツ代表。

「最近仲良くなったんだろ?聞いたよっ」

「言えよー、水くさいぞー?」なんて明るく振る舞う高山くんに、寝耳に水の西野くん。
“仲良くなった?あんなうるさい小バエと...?”なんて心の中の悪態が止まりません。

「俺も、意外と二人お似合いかもなぁとか思ってるしさ!だから、もしなぁくんさえ良かったら、」

連絡先をッ、と言いかけたところで、脱力した西野くんの手から落ちていく筆。
ずずッ。鼻を啜る音が美術室に響きます。
筆を持ってた右手の甲で涙を拭う姿に、呆然とする高山くん。

「な..ぁくん、どうし、」

「かずくんが、そんなん言うからやん...っ
ななの気持ちも知らんと、ッ」

ぐっと口を噤む西野くん、すでに限界寸前。
ここに居ると取り返しのつかないことになると察して、パレットやら筆やらを片付け始めます。

「ちょ、っと待って、帰るの?」

「...帰る、もう、かずくんと居たくないねん、」

「...意味わかんないよッ、俺なんかしたかな?何かしたなら、あ、謝るから...っ」

目を合わせてくれない西野くん。今まで聞いたことないほど冷たい声に、どうしたらいいか分からず途方にくれちゃう。

これで終わり。親友であり、初恋の人でもある高山くんを失う覚悟を決めて、ごくりと喉を鳴らします。

「二度と話しかけんといて。.....絶交やから」

意地でも目を合わせないよね。
リュックを背負ってそのまま美術室を出ようとする西野くん、もう涙は止まってくれません。
そんな彼を背後から引き止めるのが...

「待ってよ...!なぁくんッ、」

うん、高山くんだよね。
あら、既視感ある光景、一話と同じ。

「なんで怒ってるかっ、ちゃんと教えろよ、」

「..離せって」

「なぁくんが泣いてる理由も、おれ全然わかんないし、」

「ッ、」

「知りたい...、じゃないと、」

ぜ、ぜっこう、してやらないぞ。

必死で引き止める高山くん、男前なんだけど、絶対手とか震えてるし、なんなら声消え入りそう。
ここで西野くんが腕振り払ったりしたら、物語悲恋で終わっちゃうので、やはりここは...振り払わずに。

「そいつにライン、教えたくない...」

「わ、わかった!もちろんッ、ぜったい教えないよっ」

「仲良くなってないし、勝手に向こうが話してくるだけやし、」

「あ...そうだったのか...なるほど、」

「興味ないから、」

「そう、だよな!よく言ってるよな、恋愛には興味ない、面倒だ、って!」


「あーもう、ごめん。俺なぁくんの気持ち気付かなくて。本当、ごめん...っ」
めちゃくちゃ申し訳なさそうに目尻を下げて謝る姿は、まさに鈍感なそれ。
ふつーそんなことじゃ怒らないし、泣くはずないのに。
全くわかってない高山くんに、そろそろ痺れを切らす頃。

「.....興味ないねん。かずくん以外」

はぁ...と吹っ切れた様子の西野くん、掴まれてた腕を優しくほどく。

「なな、かずくんが好きやねん、」

「恋愛の意味で、ずっと好きやった」

引いたやろ?気持ち悪いよな。
苦しそうに作る笑顔、これが今の西野くんの精一杯。

「だから...絶交、な。」

好きな人にフラれて、いつも通り友達を演じられるほど、強くない、そんな想い。

でも、幸か不幸か。
西野くん...、絶交は、できないみたいですよ?

好き。そんな言葉を西野くんから受け取って、黙っていられるほどの冷静さ、高山くんは持ち合わせてません。

再び腕を掴んで、自身の方へ引き寄せちゃう高山くん、超大胆。
そんで後ろから抱きしめちゃう。高山くんより低い身長に華奢な体格、そのまま包み込まれてしまいます。

「か、ずくん...っ?」

「絶交しないよ..?俺も、なぁくんと同じだから。」

「お、同じじゃないねんっ!ななのはッ」

「同じだよ。恋愛の意味で、なぁくんが好き」

ああどうしよ、こんなことってあるんだな...っ

イケメンから一転。
耳元でなみだ混じりに囁かれる高山くんの声に、一気に熱上がっちゃうし、頭フル回転で状況理解しようとする西野くん。
結局理解しきれず、もう一回聞き返しちゃったり。

「ほんまに..っ?かずくんも、ななのことッ」

「ほんとだよ、大好き」

「う...うそや、」

「信じてくれないの?」

「あたりまえやん、ななはほんきで、っ」

「じゃあどうしたら信じてくれる..?」

おっと、お決まりのセリフですね、高山くんも、もうその気だと思う。
西野くんも.....うん、その気みたいです。

「...き、キス...とか、」

「....こっち、向いて、なぁくん。」

ゆっくり振り向く西野くんに鼻を近づけて、逃がすまいと腰に腕を回す高山くん。
“腰、細ぇ...”そんな心の声が聞こえてきます。
誰にも見られないように開いていたドアを閉めて、そこに押し付ける、いわゆる壁ドンってやつ。

「かずくん手慣れてる..っ」

「へへ、でもこんなに緊張すんの、はじめてだけどね」

「緊張してるん..?」

「うん、心臓やばいかも...」

「ふふなんか嬉しい...」

至近距離で話す高山くんと西野くん、お互いこれ以上、我慢できるはずもなく...、

「なぁくん...」

「かずくん、...んんっ」

優しく触れて啄むようなキス。離れては重なって、味わって、何回も繰り返す。
完全にキスのトリコになっていく西野くん。溶けそうになる意識を、高山くんの制服を握りながら堪えてたらいい。


「んぅっ...ふ..はぁ、」

「ん...かわいい、なぁくん..」

「かずくん..っ、ぁ、」

「ぅあっ、ごめん...!」


腰を支えてた手が西野くんのお尻に触れて、変な甘い声出ちゃう、とか。そんなハプニングもあったりするよね、この二人なら。

「お家まで、おくるよ。一緒に帰ろ?」

「うん..っ、」

「ん?大丈夫?」

「あ!へ...へいきやでっ」

そこ膨れちゃってるのをバレないように頑張って歩く西野くんとか、それに気付いて襲いたくなる衝動必死で堪える高山くんとか。
絶対います、ぜったいです。異論は認めません。


あーあ。おせっせするまで早いわ、この子たち...、
はじまったら、やばい気がする。
せーへき、ぶつかりあってほしい。
この願望叶え。




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