伊丹家のナナセとカズ〔1〕
2022/01/04 22:45


伊丹(いたみ)家とは...19thシングル『逃げ水』のMVに出てくるオリジナル設定。

伊丹ナナセ(西野七瀬)
次女。朝食はパンと決めている。毎朝の争いにストレスもある。

伊丹カズ(高山一実)
自分の世界に引きこもっているが、誰かに理解されるといいな...という思いはある。ナナセだけが理解してくれている。

以上が、公式の設定。
その他キャラクター設定は、乃木坂公式サイトからご確認を。

今回は、伊丹家のナナセとカズを、管理人が勝手に考察しています。
またまた設定を弄ってます。
ということで、オチは特にありません。
軽く見てくださると、助かります。

─────────────

【二人の出会い編】

これは、ナナセが五歳の頃。

「きた...、あっちであそぼ」
「そうだね、みんな、むこういこ」
「ッ、」

私立の幼稚園に通うナナセ。
有名な伊丹財閥の令嬢である彼女に、周りは誰一人として関わろうとはしてくれませんでした。
友達も出来ず、先生からは敬遠され、
唯一心の支えになってくれる絵本を手に、孤独な毎日を送っていました。

そんなある日。
いつものように、公園でひとり絵本を読んでいると...

「あっ!それ!わたしも もってるーっ」

突然降って来た大きな声。そこに居たのは、

「わたしもまいにち よんでるんだぁー」

無邪気な笑顔で親しげに話しかけてくる少女...カズでした。
袖口からほつれた糸が飛び出しているトレーナーに、少し汚れた半ズボンを着た彼女は、この付近の団地に住んでいる一般庶民の子。
名の知れた“伊丹家”という存在を知らない様子の彼女に、突然話しかけられ戸惑うナナセでしたが、
優しげなカズの笑顔にすぐに打ち解けていきます。

「ななも、このほん、すき...ですっ」
「なな?ななっていうなまえなの?じゃあ、なぁちゃんって、よんでもいい?」
「...!うん、いい、です、」
「わたしはかず!たかやまかず!
みんなからはかずみんってよばれてるよっ」
「か..かず、みん、」
「そうだよ!へへやったぁ、ともだちできた!」
「っ!ななたち...ともだち...?」
「うんっ、もしかして、いやだった...?」
「そんなことない..!その、うれしい、です、」
「?ともだちは、“です”いわないよっ!」
「...っ、うんっ、わかった、“です”いわへんっ、へへ」
「あ!なぁちゃんっ、わらったぁー」

ふふかわいいね、なぁちゃん!

初めての友だち、初めてのあだ名。
友だちになってから、公園で楽しく遊ぶ二人。
次々と積み重なっていく初めてに、ドキドキと鼓動が高鳴っていくナナセ。
これが、ナナセとカズの、初めての出逢いでした。


【運命の事故編】

出逢いから三ヶ月。毎日、あの公園で遊ぶ二人。
あの日ナナセが持っていた絵本しか読んだことのないカズの為に、家の書斎から沢山の絵本を持ってきて彼女に貸すことも日課になっていました。

この日も朝から書斎へ駆け出し、絵本を選ぶナナセ。
“これおもしろかったなぁ...かずみん、よろこんでくれるかなぁ”と頬を綻ばせながら、楽しそうに絵本を取り出していきます。
厳選したものをリュックへ詰め込み、朝食の準備を終えているリビングへ向かうと、そこには先客が。
既に食べ終えた様子の、米粒の付いたお椀を積み重ねた姉・マイ(七歳)と、従姉妹の二卵性双生児イク&マツ(七歳)でした。

「おはよう、遅かったね、ナナセ」
「いや、はやすぎやろ...もうおこめなくなってるやんっ」
「こら。その関西弁。お父様にも注意されたでしょ?」
「...かずみんは...かわいいって、ほめてくれたもん...、」
「まったく...いくらお友達がいないからって、団地の子と遊ぶなんてだめよっ、ね?イク、マツ?」

「お姉様の言う通りよ!
ナナセー、今日は私とピアノでも弾こっか?」
「モグモグ...マツも付き合いますよー?」

「つまらへんからいや。
きょうは、かずみんと おしろつくる ってきめてるねんっ!」

この歳上三人組は七歳で同い年ということもあり、いつも『遊んであげる』とは言ってくれるものの、結局は三人で盛り上がり、置いてきぼりにされてしまうナナセ。
さっきまで綻ばせていた頬をムッと膨らませてから、
グッチの小銭入れを首に下げます。

「なな こんびに いってくるっ、おにぎりかずみんといっしょにたべるっ!」
「ちょっとナナセ!コンビニなんて行ったことないでしょっ、」
「あるもんっ、かずみんとたんけん いったもん!」

「ナナセー、お米はないけど、パンならあるよぉー」
「クロワッサン!クロワッサン!」

「いらんっ、あさは“おこめ”がいいねんっ!」

食パンを掲げたイクとクロワッサンを持って踊るマツの誘いを振り切り、伊丹家の門をくぐり抜け、出て行くナナセ。

朝八時。
カズとの約束の時間は、十時です。
出るには早すぎる時間ですが、ナナセの心は家に居る時と打って変わって、ワクワクと浮き立っていました。

一昨日カズと来た、近くのエイトトゥエルブに入ります。

“おにぎり...どれがええかなぁー”
“塩がすきって、言ってたもんな、”
“ふふかずみんと朝ごはん...へへ”

「おねがいしますっ」
「か...、かしこまりました...!」

声を上擦らせて、手を震わせながらナナセの会計をする店長。
ヒソヒソとウワサを交わして、離れていく客達。

“伊丹家のご令嬢”その奇異な存在に、周りが敬遠しているのを薄々感じながらも、頭の中をカズでいっぱいにして、気を紛らわせるのでした。


コンビニを後にし、レジ袋に入った四つのおにぎりを大切そうに抱えながら、公園へ向かいます。

道路を挟んだその先に広がる公園。
そこには、見慣れぬ人が。
トウモロコシの粒が入った袋を片手に持つ男性が、それらを地面に放ると、パタパタと羽を広げて降りてくる沢山の鳩たち。

当然その中には、ナナセが好きな...太った鳩もいて。

「あ...!あのこ、かわいいっ、まって、はとさんっ!」

無我夢中で駆け出すナナセ。
右も左も確認することを忘れ、道路へと飛び出します。

「...ッ、!!!」

猛スピードで襲いかかってくる鉄の塊。

それがナナセの小さな身体を、吹き飛ば──

「おい!大丈夫かッ?!」
「誰か!救急車を呼べ!!」
「車が電柱に突っ込んだみたいだっ、」

ナナセの身体を避け、近くの電柱へ突っ込んだ車。
へし折れた電柱が車に圧力をかけ、フロントガラスも大きく大破している状態でした。

「は、っ、は...、、」

放心状態のナナセの手から崩れ落ちるおにぎりと空になったビニール袋。

「なな、の、せい...っ」
「ななが、とびだした、から...ッ」

虚ろになった瞳に映るのは、ひび割れた後部座席の窓。


そこには、


「ッ!!後ろに子どもも乗ってる!」
「救急車はまだ来ないのかッ?!」


「....ッか...ず、みん...っ」


────頭から血を流したカズがいました。





とりあえず前半はこんなところでしょうか。
一旦、CMです。



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