隣の擬似姉妹 『過保護なクリスマス編』
2021/12/25 20:07


隣の擬似姉妹シリーズになります。
初めての方は、設定からご確認ください。

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本日、12月24日。
クリスマスイブを迎えた四姉妹の家を覗いてみましょう。

長女・真夏は、毎年お馴染みの“白菜ツリー”を手際良く作ります。
パタパタと響く真夏の足音に癒される四女・飛鳥、“まだしばらくは帰って来なくてもいいけどなぁ”と心の中で呟きます。

と。そこへ、飛鳥の願いも虚しく。

「ただいまぁー、帰ってきたよぉ」
「真夏ーっ、これで合ってるん?かずみんと迷いながら選んだんやけど、」
「あー!これこれ!二人ともありがとう、助かったー」

真夏に頼まれた調味料を、近所のスーパーへ買い出しに行った次女・一実と三女・七瀬が帰ってきました。
パンパンになった買い物袋二つを持つ一実、その袋の中には大量のお菓子とジュースが。
親のいないクリスマスは初。姉妹だけの宴の始まり、といったところですかね。楽しそうです。

まだまだ終わらないディナー作りに、エプロンを着た一実が加わります。
コートを脱ぎパーカーに着替えてオフモードに切り替わった七瀬、早々に飛鳥とゲームをスタート。


夢中になる二人に、ようやくここで....、
毎年恒例の、“あの言葉”が降ってきます。


「あ!なぁちゃーん!あすぅー!
サンタさんにちゃんと手紙書くんだよぉー!」
「じゃないと、サンタさん来なくなっちゃうよぉ?」


キッチンから聞こえてくる無邪気な姉たちの声。

そうです。
実は、三女・七瀬と四女・飛鳥は、高校生になった今でも、サンタさんの正体を知らな───


「......今年も知らないフリしとく?」
「当たり前やろ...、
あんな楽しそうやのに、なな達がサンタの正体知ってる、なんて言ったら悲しんじゃうで?」


......まあ。そりゃ、知ってますよね。
高校生ですもん、さすがにね、察してます。

しかしこの姉妹、真夏も一実も、妹たちに過保護なわけです。
サンタさんの正体を知られまいと、毎年奮闘する姉たちの気持ちに応えるため、七瀬も飛鳥も気付かぬふりを続けます。

手紙を書きながら、

「プレゼント、ななはスイッチのソフトで、
“まりおぱーてぃーすーぱーすたーず”がほしいなぁー(大声」
「私は湊かなえの小説、“告白”がほしいなー(大声」

「なぁちゃんはマリパか!ふむふむ(小声」
「飛鳥は湊かなえの告白ね、よしっ(小声」


それから出来上がったディナーを食べ、お菓子パーティーを繰り広げ、ゲーム大会を開催して、夜10時に。


「あぁー、ちょっとうちら出掛けてくるね!
真夏が大学に忘れものしたみたいだから!ね?真夏っ?」
「そうなんだよねっ、二人は大人しくいい子に待ってるんだよ?」
「「はいはーい、いってらっしゃーい」」

残った二人、小さく吹き出します。

「くく、毎年同じ嘘っ、」
「ふふっ、クリスマスイブになると必ずどこかに忘れものしちゃうんやなぁ、てかこの時間大学入れるん?」
「入れないでしょ、閉まってるでしょ絶対」
「やんな、ふふ、嘘下手やなぁ」

十年以上変わらない嘘が可愛くて、じわじわと笑いだす七瀬と飛鳥。
ついでに、真夏と一実がいる前では食べられなかったサキイカやジャーキーをむしゃむしゃ頬張りはじめます。

理由はもちろん一緒。
好きな人の前では....食べづらいですもんね。


30分後、帰ってきた真夏と一実は背中にラッピングされたモノを隠しながら、コソコソと部屋に入っていきます。

「わー、あかん、まけそうー(棒」
「いけいけー、がんばれるいーじー(棒」

気付かないフリを続けながら、ようやくリビングに戻ってくる真夏と一実。

「よし!じゃあもう一戦しよっか!今度は私となぁちゃんvs真夏とあすで!」
「ぜったい負けないぞーっ」

清々しい二人の笑顔。
無事妹たちのプレゼントを買うことができて、ホッとしたようです。


深夜2時。
眠ったフリをする七瀬と飛鳥、それぞれの部屋に、サンタさんたちがやってきます。

「今年も良い子だったねぇなぁちゃん...サンタさんからプレゼントだヨォー」
“ふふ、ほんとはサンタさんからキス...がええねんけどなぁ...がまんしよ”

「飛鳥ちゃーん...よしよし、おりこうさんだねぇ、ご褒美だよ...」
“はぁ、これじゃ来年もこの調子だなぁ。
まあ真夏が喜ぶならやってやらんこともないけど”


枕元に置かれた二人からの手紙を読みながら、ぽかぽかと胸を温かくして就寝するサンタさんたち。

来年も再来年も、過保護なサンタさんたちによるクリスマスが、ずっと続きますように。





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