隣の擬似姉妹 『間接キス編』
2021/12/14 19:48


隣の擬似姉妹シリーズになります。
初めての方は、設定からご確認ください。

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「七瀬ちゃんのことが、ずっと好きだった。
もし良かったら、俺と付き合って?」

放課後、夕日で朱に染まった教室の中で青春の一コマを繰り広げている二人。
告白しているこのイケメンは、校内でも一位二位を争うほどの人気男子、サッカー部キャプテンというオプション付きの武田くんです。

そして、現在進行形で告白されているのが、

「あーえっと...ごめんなさい、」
死んだ魚の目をした三女・七瀬です。

“誰やねんこいつ...なんでタメ口やねん、しばかれたいんか?”な七瀬、早く帰りたい。帰宅部の血が騒ぎます。

「もしかして、好きな人いるの?俺以外に?」
「はい、います、」
「誰?山田?岡村?それとも石塚?」

“いやそいつら全員誰やねん!”
盛大にツッコみたいところをなんとか堪え、「違いますけど」と冷たく返答。
それから何度も好きな人について問い詰められる七瀬。当然ながら、教えない、教えたくない、と譲らぬ構えで、「まあそんな感じです」「はい、そういうタイプです」とテキトーに相槌。

「もう、いいですか、そろそろ」
「せめて名前ぐらい教えてくれてもいいじゃん、教えないってさ、お前もしかして嘘ついてんだろ?」
「はぁ...なな帰ります、じゃあ」

強引に引き止められそうになる手を振り払って、早々に逃げ出します。

「うざっ!もう二度と行かへん!なんやねんアイツ!」
徒競走並みに早く歩きながら昇降口へと向かう。
これから靴箱に入ったラブレターは、全て破棄しようと心に決めるのでした。

怒り心頭に発した七瀬、鎮められる人なんて、この世にはどこにもいな──

「あ!なぁちゃーんお疲れ様ー、迎えに来たヨォーっ」

あらら、いましたね。失礼しました。
腕を上げてブンブン振りながらニコニコと笑ってる次女・一実。
こどものような無邪気なその笑顔に一瞬でやられてしまい、先程の怒りは何処へやら。

「へへ、かずみん...、いつからおったん?ラインしてくれたら良かったのに」

「いやぁ、サッカー部の子たちになぁちゃんのこと聞いたら、“遅くなると思いますよ!うちのキャプテンが今告白してるんで!”ってニヤニヤしながら教えてくれてさ、」

電話しちゃったら雰囲気壊すかなぁーと、なんて苦笑い。

「それにしても、モテるねぇ...?」と一実の余計な一言に、チクっと痛みを感じながらも、「でも、あれやで、ちゃんと断ったで、好きな人やなかったし」と訂正。

しかし、“好きな人”という単語に、「え、なぁちゃん、好きな人いるの?」「誰誰?!お姉ちゃんが見定めるよ!」と興奮気味の一実。

....好きな人のことなど、目の前の本人に言えるはずもなく、うまく躱しながら駐車場へ到着。
助手席のドアに手をかけようとすると、そこには先客が。

「なな、遅すぎ。何時間待ったと思ってんの」

ストローを口に咥えながら、不機嫌気味に呟くのは、四女・飛鳥。

「そんな待ってへんやろ、てか、そこななの席やねんけど」

眉間に皺を寄せながら、助手席のドアを開けて、移動しろと言わんばかりに顎で命令する七瀬。

“かずみんの助手席はななのもの”
そんな執念で今まで助手席に座っていた模様。

「いや、ななの席とかないでしょ、早く後ろ座りなって」
「........」
「あー、もう、わかったわかった、移動しますよ」

無言の圧に押され移動する飛鳥。
車内にようやく三人が収まり、駐車場を出ます。


家までもう少し、というところで、新たな火種が。

「ずー、やっぱコレ甘すぎ、」
「え!ちょ、あすー!飲み過ぎだよぉ、半分も減ってんじゃん」
「くくっ、飲んでやろうと思って」
「うわぁーまじかぁー」

すぽっ、とドリンクホルダー置かれたのは、さっきまで飛鳥が飲んでたスタバのキャラメルフラペチーノ。

半分まで量が減ったそれを、笑いながら許す一実。

“え...なにこの...カップルみたいなやり取り...”
“しかも、かずみんのやつを飛鳥が飲んで...ッ”
“ってことは、間接キ....!”
“ななを差し置いて、なんてこと...!”


「!!ななも!飲む!飲みたい!」

「えっどうした、急に、怖、」

いらんことしか言わない飛鳥を取り敢えずキィ!と睨みつけ、飛鳥が咥えてたそれを咥えて飲んでる一実に懇願します。

ストローを咥えるピンク色の薄い唇、美味しそうに目を細める仕草、飲み物を持つ綺麗な指先。
胸が高鳴るのを抑えつつ、赤信号になった瞬間、必殺の上目遣い発動です。

「ん?なに?なぁちゃんも味見してみる?」

「うんっ、ななも、それ、飲んでみたい」

「へへ、いいよぉー!、なぁちゃんの口に合えばいいけど」

すっと渡されたそれに、ゴクリと喉を鳴らして、緊張の瞬間。

“間接キス...かずみんと、間接キス...っ”
パクり、とストローを咥えて、飲むことを忘れる七瀬。

「どお?おいしい?ふつうのキャラメルフラペチーノにチョコレートソースを加えてるんだけど...」
「だからか、なんかめっちゃ甘いと思ったわ」
「これくらい甘くないと、しっくりこなくてさぁ」
「ずー、ってほんと甘党だよね。」

「?ななまだ飲んでんの?おーい、聞いてんのかー?」
「なぁちゃんっ、全部はダメだよっ、私もまだちょっとしか飲んでないからね、絶対だよっ!」


もちろん耳に入ってくる訳もなく。

“かずみんと間接キス...っふふ、甘いな、不思議やなぁ”

キャラメルフラペチーノよりも間接キスの甘さにカラダが溶けそうになる七瀬なのでした。




ーーおまけ

次の日。
サッカー部のエース、石塚くんが七瀬の教室に現れ、屋上へ来るよう呼び出されます。
“また、告白、とか...、さっさと断ろ”とため息を吐きながら、ダルそうに向かう七瀬。

「あの、実は、俺、」

「ごめん、なな、好きな人が、」

「俺!七瀬ちゃんのお姉さんに一目惚れしました!
お願いします!連絡先教えてください!」

「.....??!アホか!!教えるわけないやろ!!」

「恥ずかしながら、初恋なんです!お願いします!」

「こっちやって初恋じゃボケ!!絶対教えるか!!死んでも無理やから!!とっとと諦め!」


“最悪や!もしかしたら他にも敵が...!”
“昨日サッカー部に話しかけたって言ってたし、
あのサルどもにななのかずみんを取られるわけには..ッ”


そうして放課後。
「なぁちゃんっ!迎えに来たヨォー。
いやぁ、みんな優しいねぇ、教室まで案内してくれたんだぁ」
「.....かずみん、お迎えは、駐車場で待ってて、」
「え」
「絶対やで。絶対やからな。あと、誰かに話しかけられても、話したらあかんで?」
「えー、さっき男子テニス部の子たちがボール落としてたから、拾うの手伝ったりしたけど」
「ッ!また敵を...!」
「なになに?どうしたのなぁちゃん?」





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