Novel | ナノ

最強!オリエンタル商店街(1)



Opening NC1978.12.10

 オリエンタルタウンと呼ばれる日系人区でその報道がされたのは、丁度お昼時だった。
多くの人が、古き良き日本の下町に良く似たその街で、何気ない普通の生活を送っていたわけだが、オリエンタル商店街の人々は、茶の間や食事処、電気屋のテレビなどでそのニュースを見て聞いて、特に古くからここに住む壮年層がほぼ全員同じリアクションを取った。
 ブーッ!
蕎麦屋で蕎麦を啜っていた客数名全員が蕎麦や蕎麦湯をふきだした。
接待をしていた蕎麦屋の女将が、お盆を取り落として絶句、蕎麦を茹でていた主人が「はあ?」と大きな声でテレビに言った。
「ちょ、今のって、鏑木さんちんとこの次男坊だよな?」
「つーか、ワイルドタイガーじゃねえか」
「え? ちょっと意味が解らないんだが? おい、だって虎坊ってヒーローだろう? アポロンメディア所属であの・・・・・・」
「はあっ? なんでワイルドタイガーが、バーナビーの親戚だか殺さなきゃならないんだよ」
 一斉に立ち上がる人々。
表に飛び出すと、同じようにどんぶりやら湯のみやらを持った人々が、奇妙に顔を歪めておろおろとしている。
「おい、誰か電話しろ、鏑木さんちに!」
「いやいや待てよ、安寿さんじゃなくて、村正んとこじゃねえか、連絡するなら」
「じゃ、鏑木酒店に電話してみろ」
「みんな静かにおしよ!」
 動揺して殆ど怒鳴りあうようにして言い交わす町民に、一人のおばさんが喝を入れた。
「また、虎坊が犯人と決まったわけじゃないだろう!? もしもの事態があったら、アタシがシュテルンビルトまで行ってやるよ! だから続報を待ちな!」
 オリエンタル商店街で駄菓子屋を営む、通称京(キョウ)さんである。
「それより問題は、このニュースで、子供たちにワイルドタイガーが鏑木さんとこの次男坊だってバレることだよ! ついでに鏑木さんとこの次男坊が殺人容疑者だなんて、鏑木さんとこの楓ちゃんも困るだろ! あんたたち、いつものように、N.E.X.T.関係のいざこざは、特に子供には! 偏見なんか与えちゃならない。 いいかい、この話題は慎重に! こんなんでまたいじめやらなにやら起こったらたまらないよ。 解ったね!」
 N.E.X.T.関係の問題、特にいじめやら差別やら、そういったごたごたは。
「あたしらの世代で充分悩んだ、苦しんだ。 虎坊で最後にするって、決めたんだよ私らは。 オリエンタル商店街所属の私らは、二度と繰り返しちゃならない。 虎坊がデビューした当時に、全員で誓った。 その誓いを今果たす時だよ!」


  

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