Novel | ナノ

最強!オリエンタル商店街(2)



TIGER&BUNNY
【最強!オリエンタル商店街】 The Fantastic People of the Town Shopping District
CHARTREUSE.M
The work in the 2012 fiscal year.


NC1979.4→NC1966.1


「安寿さん、魚屋の安(やす)さんがごめんって謝っとくれって」
「やっぱりあれ、安さんの能力かい」
「あんたんとこも苦労するね。 虎坊に続いて楓ちゃんもなんかまあ珍しい能力みたいで。 なんだか、コピーしちまうんだって?」
「気づいたのはつい最近だけどね。 ていうか、商店街のことを私も忘れてたよ」
 ずずっと安寿は昆布茶を啜った。
「最初は虎徹のハンドレットパワーをコピーしてたんだね、ありゃ。 またハンドレットパワーだよってうんざりしてたとこなんだけど、急に能力が変わったのさ」
「どこで気づいた?」
「八百屋の良さんの、なんだったっけ、磁力能力だっけ? アレを貰ってきた時」
  一緒に昆布茶を啜っていた、安寿の友人でもある駄菓子屋を営む、通称京さんはため息をついた。
「良さんのアレも 目覚めた当時は相当迷惑だったからねえ・・・。 今はちゃんとコントロールしてるみたいだけど、一時期電気屋の本さんとは険悪になっちゃって大変だった」
「大変だったわ」
 うんうんと安寿も頷いた。
「あれは本当に迷惑な能力だったわ」
「あーでも、歴代迷惑な能力っていったら、やっぱ虎坊に敵うのがまだでないねえ・・・・・・・」
「・・・・・・・」
 暫く二人で頷きあう。
「大変だったわ。 もう、兎に角大変だった」
「虎坊はねえ、あれは可哀想だったね」
 京さんは頷きながらせんべいを一枚齧る。
ぱりぱりと音が茶の間に響いた。
鏑木家のキッチンスペースは一時期壊滅的な打撃を、楓に、正確には楓が虎徹からコピーしたハンドレットパワーによって蒙ったが、大工の玄(げん)さんが一日で綺麗に修復してくれた。
玄さんは、物質再構築N.E.X.T.で、大体人間と同じ質量のものであれば、破壊される前の状況を再現することが出来る。ただし、無機物に限るらしい。
その力に目覚めたのは30も過ぎてからだったらしいが、暫く気づかなかったという。
魚屋の安さんは、生物召還N.E.X.T.。 正確には、なにやら催眠音波みたいなものを身体から発するらしく、その時折固定の生き物を、催眠状態にするのか自分の周りに引き寄せてしまう能力者なのだ。
これもなにかコントロールが難しいらしく、かつて節足動物を大量に呼び寄せてしまったときは、商店街全てが大パニックに陥った。
八百屋の良さんは、磁力使い。 自分の身体を磁石にできる能力者で、これまたコントロールできなかった時は集会でも議題に取り上げられた。
電気屋の商品を全部駄目にしてしまい、主人の本さんとは非常に仲が悪くなった事がある。 その本さんもドリームマスターと呼ばれるN.E.X.T.で、密かに裏で夢売り商売をしている。 たまにシュテルンビルトに出張しているのはそのせいだ。 文具屋の奥さんであるサキさんは知識貸し出し型のサイコ系N.E.X.T.で、その娘であるショウコさんは一昨年予知夢の能力に目覚めた。そして今安寿と世間話をしている駄菓子屋の京さん自身も、 ワープN.E.X.T.だ。
 そう、オリエンタル商店街に店を構える殆ど全ての住人が、N.E.X.T.だったのである。


 その衝撃の事実をつい最近まで教えてもらっていなかったのは、同じN.E.X.T.のはずなのに、長いことオリエンタル商店街による庇護の対象であったワイルドタイガーこと、鏑木・T・虎徹その人だった。
「俺、N.E.X.T.な上にヒーローだったのに!」
 と悲鳴を上げたが、村正が「この話を教えるのは、二十歳過ぎてて、オリエンタルタウンに住む者だけっていう規約があるんだよ。 お前はヒーローになったらオリエンタルタウンを出るって公言してたし、その後実際ずっとシュテルンビルトに住んでただろ」
と冷徹に言う。
「あー? えーっ? じゃああの夢って、もしかして本(モト)さんの力なわけ?」
「そうだ。 本さんに会ったらちゃんと礼を言っとけよ! お前がヒーローライセンスを取れたのは単(ひとえ)に本さんと、サキさんのお陰だからな!」
「えっ? サキさんもN.E.X.T.だったの?」
「あの人は、知識貸し出し型のサイコ系N.E.X.T.だ。 お前の代わりにライセンス試験勉強してたのはあの人なんだっ!」
「な、なんだってー!」
 虎徹が驚愕。




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