Novel | ナノ

SPLASH! 2 人魚のいる水族館 《北の星座》 (1)

【T&B】SPLASH!2 人魚のいる水族館 The aquarium where a mermaid is.


Prologue


 ひとりにしないで。
――だって貴方が居なくなったら、私一体どうしたらいいの。誰とも会話も出来ずここでたった一人、死ぬまで。
そう彼女に言われた時、虎徹はなんとも応える事が出来なかった。
だが、行かなければならなかった。
二度と帰ってこれないとしても、行って同じような境遇の人々を守護しなければ。
 泣くなよ、そんな泣いて泣いて泣いて。
どうしていいのか判らなくなるから。頼むから泣かないで。
――娘さんも、恋人も、私もおいていなくなる、みんな居なくなってしまう。
ねえ、これは罰なの? 私が逃げたから? でもどうすれば良かったの――――。
お願いタイガー、私も連れて行って。死んでも構わない。そのまま海に打ち捨てていって頂戴。ここに一人残していかないで・・・・・・。
厳しい訓練の合間、虎徹はそれでも彼女を労わった。
なんとかして生きていって欲しかった。
それは余りにも残酷な現実を彼女に突きつけてはいたのだが・・・・・・。
――この姿は私の心の醜さなんだわ。
そう彼女が言ったとき、虎徹はそれは違うと力いっぱい否定した。
 君は君だろう。どんな姿であっても君には変わりない。見つけてくれる、きっと。
判るよ、絶対に判る。どんな姿になってもこの魔法(NEXT)は愛する人を遠ざけたりしない。ましてや引き裂く為のものじゃない。助けたいと――――生きたいと思ったからこそ俺たちは変化したんだと思う。でなければ、何故俺たちは今ここに残ったろう?
――だって貴方は人魚だもの。――――とても美しいもの。
 ううん。
虎徹は首を横に振った。
 バニーは、俺が蛸だって見つけてくれたよ。アイツは絶対そういうとこさ、間違わないんだ。
――どうして判るの?
 判るさ。
何故なら俺が信じてるから。
 信じてるんだよ、俺は。アイツはさ、そういうとこ絶対外さない。そういうやつなんだよ。ホント、敵わないなあって、思うんだ。
それと同時にさ、ああ俺が好きになったやつなんだもん、当然だって思ってんのさ。
だってこんなんなっても俺さ、バニーの事好きなんだよな。あんたもそうだろ? しみじみ思ったんだよ俺、バニーを好きになって良かったんだって。こいつを好きになって当然だったんだと。間違ってない。必然なんだ、偶然じゃないって。だからさ、あんたも信じてやれよ、あんたがさ選んだ人なんだから。そうだろ?

 それはさ、自分を信じるってことだよ。自分が好きって気持ちが本物かどうかってことなんだ。




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