Novel | ナノ

琥珀を捕む夢(13)


NC1972.朝起きて夢に涙


 白い壁と天井に私はほっとした。
良かった、今日一日私は生き延びた。
 けれど。
友恵はふうっと息を吐き出してベッドに力なく横たわり胸元で手を組み合わせて想うのだ。
 もうじき私は死ぬ。 私は死ぬ。
この戦いには長く持ち堪えられず、私は必ずそれも近い内に負けるだろう。
 それでも。
友恵はふふっと口の中で笑った。
そうね、今更だわ。 
後悔がないと言えば嘘になるけれど。
こうして振り返ってみても、愛しさしか思い出せないのは何故だろう。
美しい琥珀の瞳をした私の大切な愛はとてもしなやかで強い人で、多分私の行く末を知っていても何も言わない。 ただ笑顔で傍に居てくれようとしてくれる。
恐らく私の見えないところで涙を流し、胸を痛めているだろうけれども。
そして楓、私の娘。 まだ幼くて死というものがどれ程残酷で無慈悲で、そして潔いほど誰に対しても公平なものであるのかを理解できない。 けれど貴女をどれだけ愛しているか、そして私がどれだけ貴女を産めて感謝しているか、それだけは何時か伝えられたらと思う。
 愛してる。 愛して良かった。 そうとても愛してる。
私は愛しさだけ遺して行こう。 私の存在に何の意味があっても意味が無くても。
 友恵は枕もとの時計を見た。
もし時が戻せたとしても。



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