|log

四月馬鹿(鉢→←くく)

「兵助、好きだ。結婚しよう。」

 冗談だけど。と続けるつもりだった。 
 その瞬間、ぽろりと目尻から透明な滴が零れるのを見て、心臓が大きくどくんと撥ねた。まずい。

「す、すまん、ただの冗談だ」

「…馬鹿野郎」

 搾り出すように一言。静寂を切り裂いて、胸を突く。
 このイベントの趣旨くらい、汲み取れないはずがないと思っていた。だからこそ、たちの悪い冗談として笑って流してくれると思ったのに。そのために、今日言ったのに。
 重い沈黙に、さっきまでの空気は押し潰されてしまった。
 
「なあ、」

「三郎」

 取り合えす、何か言おうとしたが、それを遮って名前を呼ばれた。その鋭さに、背筋が伸びる。

「俺はお前なんて嫌いだ。」

 俺は、ものすごく後悔した。
 その表情に詰まった激しい思いの奔流。傷つけてしまった。取り返しがつかない。

「そういうことは、冗談で言うなよ」

 走り去る兵助を、呆然と、見送る。
 その嫌いってのは、嘘?本当?どちらにせよ、俺には駆け寄って涙を拭ってやる資格はなかった。





×××
四月馬鹿だから言いたかった鉢屋と、
この日に言ってほしくなかった久々知

ネタは友人と話してる時にできたものです。ありがとう!
 



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -