|log

飛んでいくにも翼無く(丕趙)

「翼があればいいのに」

 ね、そう思いませんか。それなら簡単に貴方の元へ飛んで行けるのに。

 ふと思いついた考えをぽつりと呟く。そうだ。なかなか良い思いつきだ。
 隣を見やれば、彼は眉根を寄せていた。

「くだらんな」

 もう、空想は自由じゃないか。

 確かに、なんて同意がもらえる訳はないと思っていたが、予想通りの反応に少しがっかりした。
 私に翼があったら、きっと、毎日のように貴方の元へ飛んで行く。
 そうしたらきっと、もっと、ずっと一緒にいられるのに。
 不意に肩を引き寄せられた。
 無言のまま。じんわりと体温だけが浸透してくる。
 そっと横顔を見れば、切れ長の瞳はずっと高い空を見つめていた。






×××
私らしくない感じの文章になりました
水の中にひと雫の悲哀を落としたような、透明感のある切なさを目指したかった。
タイトルは曹丕作の「雑詩」という詩の訳文からだったり
 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -