ゼロスは踵をかえし、そのまま部屋を出ようとした。あたしも慌てて後を追う。



 待ち合わせ場所にゼロスと共に現れたあたしに、ロイドとジーニアスは眉を寄せた。
「…なんでしいながゼロスと一緒に来るんだ?」
「もしかして、しいな、ゼロスの家に泊まったの?」
「え、いや、その…」
 慌てるあたしの肩を抱いて、ゼロスは笑った。
「あったりまえだろー? 俺さまのハニーなんだぜぇ?」
「気安く触るな! この色魔!!」
 張り倒す。ロイドとジーニアスが顔を見合わせて苦笑いしていた。そのままその場はうやむやになったのだが、もしかしたらゼロスの作戦だったのかも知れない。
 リフィルの視線が気になるが、何も言われなかった。
「でさ、次はどこ行くの?」
「天使疾患の治療が出来る人に関して当てがあるんだ。そこに行こうと思ってる」
 ジーニアスの質問に答えると、ロイドは目を輝かせた。
「さすがだな、そんな情報までちゃんと掴んでるなんてさ」
 褒められて、あたしは頬が熱くなった。なんとなく、胸も。
「ま、まあね」
 照れ隠し。ゼロスの視線をちくちくと感じた。
「で、このレアバードってのは4機しかないんだろ? ロイドくんはコレットちゃんと乗ってきたわけだから…俺さまは…」
 あたしを見た。
「やっぱりここは、ハニーかな?」
「お生憎さま、リフィルとジーニアスに一緒に乗ってもらって、あたしとあんたはそれぞれひとりで乗るよ」
「なんでだよ。俺さましいなと乗りたいな〜」
「重量オーバーだよ。あんた、ロイドよりかなり重そうじゃないか」
 ロイドと自分を見比べムッとする。あたしが鼻で笑うと、こちらを見てにやりとした。
「なるほどな。おまえのその爆乳の分、重量オーバーなわけだ」
 その指は、確実にあたしの胸を指し示していた。即座にばきっと鈍い音が響く。
「いってえ!」
「殴るよ!」
「殴ってから言うなっつーの…」
 その様子を三人が呆れた顔で見ていた。
「あなたたち、痴話喧嘩は余所でやりなさい」
「ち、痴話喧嘩じゃないよ!」
 リフィルの中ではあたしとゼロスはそういうことになってしまっているのだろうか? だとしたら、心外だ。



 昨晩のやり取りがふっと頭をよぎる。
 レアバードで空を翔けながら、あたしは数年前のことを思い出していた。腐れ縁の始まり、ゼロスと初めて出会った、王立研究院・精霊研究所でのことを。



 To be continued...

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