星 の 戯 れ
`I love you' that I could`nt say.
近づく
昼間の明るさの中で、いつも見ていたアーモンド色の瞳が、これでもかというくらい見開かれている。
彼女がフォークを取り落としても、オレたちはしばらくお互いに目を反らせずにいた。仕事帰りに偶然寄った喫茶店に、どうしているんだろう?
「何してんの?さっさと進んでよ。」
沈黙を破ったのはオレでも彼女でもなく、後から店に入ってきた莉磨だった。
見つめ合ったオレたちを見比べて、「知り合い?」と聞いてくる。それに軽く頷くと「ふーん」とだけ言って、さっさと席に着いてしまった。
そのまま突っ立ってるわけにもいかなくて、軽く頭を下げてから莉磨のもとへ行く。すると彼女はビックリしたような顔をした後、少し戸惑いを含みながらも柔らかく笑った。
「この前のキャンディーくれたの、あの人?」
「あ……うん…。」
「ふーん。普通科でしょ?」
「うん。」
「別にオトモダチ作るのは勝手だけど、メンドーなことにだけはならないようにね。」
「………うん、分かってる。」
分かってる。
オレはヴァンパイアで、あの人はニンゲン。
そう、分かってるんだ。
普通科と夜間部は必要以上に関わるべきじゃない。
オレたちのヒミツがバレたら…………
バレたら、あの人の記憶を消すことになるだろう。そうしたら、もうあのアーモンド色がオレを映すこともなくなるのだろうか。
「支葵。」
「え、」
「コーヒー。そんなに砂糖入れてどうすんのよ。」
「…………。」
一瞬でも考えただけで、何故か怖いと思った。
呆れたような莉磨の視線を受けながら、やけに甘いコーヒーを仕方なく飲む。
分かってる。
ーーーーそれでも、気になるんだ。
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