星 の 戯 れ
`I love you' that I could`nt say.
少しずつ
目が、覚めた。
朝の光が痛いくらい眩しくて思わずカーテンを閉める。
昨日はどうしたんだっけ?と記憶を辿るが、背中を支える温もりと意外と高い声、近くでみるグレーの色ばかり蘇る。
そんな夢を見るなんて、わたしはよほど彼のことが気になるらしい。
だがベッドサイドに置いてあるものを見つけて、果たして本当に夢だったのだろうか、と思う。
「チョコレート……なんで?」
こんなブランドもののチョコレート、わたしのものじゃないことは確かだ。
一体誰が…?と、そこで思い出すのはやっぱり彼のこと。
「そんなわけ、ないよね。」
きっと寝ぼけながら自力でベッドに戻ったんだろう。そんな風に言い聞かせた。
着替えてから部屋を出ると、昨日心配してくれた友達がいた。特に仲のいい友達がいないわたしを気にかけてくれる、世話好きな子。
彼女はわたしを見つけると、顔色を覗き込み笑った。
「うん、もう大丈夫そうね。昨日は真っ青だったから心配したのよ。」
「ごめんね、寝不足だったみたいで…おかげさまでもう大丈夫。」
「なら良かった。…そうだ、これから買い出しに行くの。せっかくだから貴方も一緒に行きましょうよ、外の空気を吸うのも気分転換になるわよ。」
そう言った彼女は、わたしが返事をする前に、10分後に寮の前ね!と満面の笑みで言いながら部屋に戻ってしまった。
行く、って言ってないんだけどな…。
だがあの調子じゃいくら断っても無駄な気がする。確かにたまには外の空気をすった方がいいかもしれない。外出許可はなかなか下りないのだから。
なんとか自分を納得させ、財布や必要なものだけを部屋からとって、わたしは外へ向かった。
***
「ふう…。」
あれから数時間。
やはり何が何でも断れば良かったかもしれない。
普段休日は1日寝ているのに、昨日睡眠をとったから大丈夫だとタカをくくったのが間違いだった。久しぶりの外出は予想以上に疲れを伴った。
一緒に来た友達は、「ここで休んでなさい!わたしはもうちょっと買い物してくるわ。」と言って、疲れきったわたしを喫茶店に押し込み、再び外へ出てしまった。アクティブだ。
だがそれも有り難い配慮だ。
ついでに頼んでみたケーキセットも美味しいし、疲れはしたものの良い休日だったかも、なんて思った矢先のこと。
「あ。」
聞いたことのある声だった。
気にしないように、と今朝しまいこんだはずの記憶が一瞬で溢れる。持っていたフォークが、からんと音を立てて皿の上に倒れた。驚きすぎて声も出ない。
どうして、彼がここにいるんだろう。
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