星 の 戯 れ
`I love you' that I could`nt say.
キミのこと
角部屋のこの部屋は、他の部屋とは違い少し離れたところにあって、窓の外にベランダのような足場がある。
わたしはいつもそこに座って空を見上げている。
そして視線を感じてちょうど裏庭にあたる地上を見ると、決まってそこに彼はいた。
その夜は月がとても明るくて、いつもぼんやり暗闇に浮かぶだけの白い制服がハッキリ見えた。
制服だけじゃない。
同じくらい白い肌、赤みがかった茶色の髪、色素の薄いグレーの瞳。
この場からでも、とても綺麗な人だと分かった。
いつものように一直線にやってくる視線は変わらない。だけどこんなによく見えるのは初めてで……
だから、だろうか。わたしはいつもと違う行動を取った。
一度部屋に戻って、引き出しから目当てのモノを取り出す。再び外に出ると、変わらず彼はそこにいて少し安心した。
月光に照らされる彼。視線は重なったまま。
いつものように手は振らず、呼び寄せるように手招きをした。
サクリ、と芝生を踏む音。
何も言わず、窓の下まで彼は来てくれた。そんな彼に向かって、わたしは手のひらの中にあるモノをそっと落とす。
キラキラ包み紙が光る、色とりどりのキャンディー。
それが全て下にいる彼の手のひらに収まるのを見て、笑顔が零れる。
キャンディーを見つめたあと、もう一度こちらを見上げる彼に今度こそ手を振った。
すると少しその場に留まって、いつものようにふい、と行ってしまう。
毎夜繰り返される、別の世界の人との逢瀬。
そんな非現実的なところがわたしの胸を踊らせていた。
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