Chapter 1


葉を落とした木々の隙間から、白茶に霞む街並みが覗いていた。綿花のような、綿菓子のような、ふわりとした純白の雲が、透きとおった蒼穹に佇んでいる。天球を軋ませる冷ややかさが、冬を待つ樹木の間を歩む青年の頬を引っ掻いていた。霜に覆われた落ち葉を踏みつけながら進む青年は、歩を踏み出す度に靴底を押し返すその弾力を楽しんでいるようだった。
 彩りが眠りについた林の頭上では、白が蒼を覆い尽くしている。樹木が疎らな林を走る風が、乾いた腕で、青年の頬を撫でていった。林を進む青年の、金緑石めいた色彩を呈している、やや癖のある短髪が揺れ、外套の裾が翻る。
 鮮やかさが息を吐いている林に、極彩が湧いていた。
 青年の足が停まり、眼鏡の奥の蒼の目が眇められる。鋭さを増した眼の先では、色褪せた数台の幌馬車と、鮮烈な彩りの布を纏う人々が、拓けた林を埋めるように佇んでいた。

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