Chapter 4


目指す扉の持ち主は、深緋を纏うヴェッターグレン家。ロダの始まりからロダと共にあった深緋が、祈りの家の腹より遠く離れたところに礼拝堂を置くことなどあるはずもない。
扉が遠かったのは、足取りが重いからだ。苛立ちが増すのは、我が身の鈍重さゆえか。
背後で蝶番が軋む。気流が手燭の灯を揺らす。通り過ぎてきた扉のひとつが、淀みのような風に圧されて細く開く。燃え盛る燭火の瞬きを集めた光が、廊下に溢れ出る。
いつまで経っても辿り着かないと苛立っていた扉は、随分と前に通り過ぎていたのだ。
ぼんやりとしているにも程がある。扉に大仰に刻まれている紋章すら、まともに見れていないとは。
唇が歪む。咽喉がひくつく。こみあげてくるものを抑えることができない。声をあげて笑い出してしまいそうだ。
 燭火を零す扉へと引き返す。脚だけが別の生き物ででもあるかのように、歩は鈍い。
闇を掻き除けるようにして、目指していた扉の前へと辿り着く。
扉の隙間からは、深緋が捧げた祭壇が見えた。祭壇に壁のごとく並べられた蝋燭が、礼拝堂に燭火という光を溢れさせている。祭壇の根に横たえられている少女は持参した花束を捧げる相手であり、こちらに背を向けて少女に覆い被さるように跪いているのは白銀の髪の青年だった。

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