Epilogue


 重厚な彫刻と豪奢な絵画に彩られた広間に足を踏み入れた少年は、悠然と椅子に寛いでいる人物を目にして立ち尽くした。少年の菫色の目が驚愕に瞠られる。日脚のように天窓から射しこむ、やわらかさと硬さとが綯い交ぜとなった透きとおった光に撫でられて、少年の黒髪が銀のような煌きを撒いた。
 椅子に寛ぐ男が、単眼鏡に陽を弾かせて面を上げる。そして、呆然としている少年を、細めた目で頼もしそうに見つめた。

「久しいね、リラ。元気だったかな? あれからもう三年か。大人っぽくなったものだ」

 黒と金を基調とする荘厳さを従えて脚を組む男は、慈しむかのように、カルヴィニア公を見上げた。

「サディヤ侯」

 困惑を滲ませるリラに、男はゆるくかぶりを振る。

「ヨーヴィルでいいよ、カルヴィニア公爵。私はマデルノ卿に会いに来たんだ。君は少年王に会いに来たようだが」

 かすかに警戒を纏うリラを、愉快そうにヨーヴィルは見遣った。

「ところで公爵、少し時間を貸してもらえないかな?」

 突然の提案に、目を瞬き、リラは首を傾げる。ヨーヴィルは大仰に片手を挙げ、芝居がかった仕草で後方の壁を指し示した。

「娘が一緒に来ていてね、君に会いたいそうだ。もし娘の我が儘を聞いてくれるのならば、案内は、彼が」

 導かれるままに眼を移したリラは、そこに佇んでいた青年を見て取り、目を瞠る。壁際に佇んでいたカドベリー・カースル族の青年は、どこか居心地が悪そうに、ぎこちない笑みを浮かべてみせた。

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