Chapter 4


「どういうつもりなのさ」

 僕の頬から冷たさが離れる。上目遣いにユベールを見遣ると、苦笑をたゆたわせながら肩をすくめていた。

「セルヴくんが気にすることはありませんよ。オルトヴィーンの判断です。お父さんとして嬉しかったんじゃないですか?」
「何それ」
「だって、セルヴくん、本当に無茶だと思うことは口にしないじゃないですか。あれでも気にかけてるんですよ。甘えてくれない、って」
「飛躍のしすぎじゃない?」
「いいじゃないですか。甘えてしまいなさい」

呆れを隠さない僕に、ユベールはにこりと笑う。そんな僕たちの背後で、わずかに、扉が開いた。それに気づいたユベールが扉から出てきた人物に問う。

「フレデリック、あの子の様子は?」

 長身の傭兵は表情らしい表情を浮かべることもなくわずかに眼を落とした。そのわずかすぎる所作から何かを読み取れるのは、ユベールのユベールたる所以だと思う。

「会いに行っても大丈夫みたいですよ」

 弾けるような笑顔を僕に向けて、ユベールは水差しと杯の載った盆を僕の手の上に置いた。

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