短編 | ナノ

 回

――ある女郎屋に、顔の爛れた少女がいた。
売られて間もない頃に、女郎屋で家事があり顔にヤケドを負ってしまった。
売り物にならないと、主人は困ったがこの際小間使いでもなんでもやらせようと、少女に過酷な労働を敷いた。
部屋は薄暗い地下、毎日朝から晩までへとへとになるまで働かせられ、働いた先では顔で蔑まれる。
長い髪で顔を隠して居るものの、醜い顔はどうしても人の目にとまり、石やゴミクズを投げつけれる毎日だった。
少女は憎む。
生まれを、こんな顔にした火事を、蔑む女たちを、嘲笑うお客たちを、酷い扱いをする主人を……憎んで憎んで憎んで……ひたすらに堪えた。
どんな扱いにも無表情で対応し、表情を削ぎ落として応えた。
ここ以外に、行くあてなど……なかったからだ。

それを良く思わなかったお客が居た。

少女を見るたび、罵詈雑言と唾を吐き捨て罵った。しかし少女はこれっぽっちも表情を動かさない。
それなら、とお客は少女に乱暴した。
無に帰依していた少女は、泣き喚きお客はそれに興奮して暴力と共に犯した。
女郎屋の主人は金を貰って黙り、女たちは悲鳴が聞こえるのを嘲笑った。
少女の中に、幾数年積もりに積もった激しい憎しみが、爆発した。
――殺してやる。殺してやる。殺してやる……っ!
怨嗟を吐きながら、汚れた身体を引きずり、灯篭の火を借りて女郎屋に火をつけた。
自分は、その手に松明を持って、女郎一人一人の顔に火をつけて回りながら……。

こうして女郎屋は焼け落ち、女もまた……その大火で焼け落ちた。

その街では数日後、また火事がありそれはそれは赤々と燃え、火消しが火を消そうにも一行に収まらない火であったとされる。

しかし不思議なのは、その火の出が分からないことで……唯一、燃えたのは一人の男であった。
大層火が熱かったのだろう……それはそれはくるしい顔をして、焼け死んでいた。






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