短編 | ナノ

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仕事が終わり、家に直帰すると寝室から「やめて!やめてください……ッ!!」と聞こえ、慌てて駆けつけると妻が一人、ベッドの上で乱れていた。涙で濡れた顔。俺を見るとシーツで身体を隠し抱きついてきた。
「どうしたんだ……一人で」
「一人じゃありません……!弟さんがいきなり……」
その後は泣いて話にならなかった。推測するに、寝室で寝ていたら弟がいきなり襲ってきたらしい。
弟。
どこにいるのか。
電灯もついていない、真っ暗な寝室に姿はない。
気配も感じ取れない。
困惑しつつも妻の身が心配で「今日はホテルに泊まろう」と自分のスーツを被せ、足早に家を立ち去った。
立ち去る際に――強い、視線を感じたのは気のせいではない。




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