◎ 02
彼女は、後ろからの攻撃も、尋常ではない動き――……野性的な反応で、不良を倒す。
少女が不良達から殴られた痕跡はどこにもない。その動きは、「動物」だった。
断末魔が響いたとき、不良達に「恐れ」が走った。ジリジリと少年と少女を囲むように、後ろへ下がっていく。
二人は、自分から追うようなことはせず、トンッと背中を合わせた。
「……ヒロキ、息上がってるぜ」
「……そんなことねえし。まだまだイケるっつーの」
ヒロキと呼ばれた少女は、鼻で笑ってみせたが、疲労の色は隠しきれなかった。
「嘘つくなよ」
「イチル、お前もだろ」
イチルと呼ばれた少年もまた、最小限に戦っていたものの、約15人もの相手をするのはキツかった。息こそ上がっていないが、はー……と深く息を吐いた。
そして、苦笑しながら言う。
「……喧嘩売ったのが間違いだった、とは思いたくねえな」
「イチル、後悔なんてらしくねえぞ」
ヒロキは、イチルが言うことにむっとしたが、その気持ちが分からなくもなかった。
「……しょうがねえだろ、そんなもん」
彼は、吐き捨てるようにいう。
イチルは、そこそこ名が通った不良だった。彼は、目付きが悪く、勘違いされることが多かった。そのため、不良から喧嘩を売られることも多く、それを対処していくうちに腕っぷしが強くなった。そのうち、名が通るようになり、勘違いで喧嘩を売ってくる輩も少なくなってきた。
ヒロキは、喧嘩がただの趣味みたいなものだった。男兄弟の中で育ち、「女らしく」と言われて育ったが、男と混じって遊んでいればそんなのは無理。女友達をいじめる、男子を退治していたら、いつの間にか強くなった。それが発展して、街にいる不良がカツアゲや女の子を脅している姿を見ると、すぐ助けに入った。それが喧嘩に発展し……。不良達から警戒されている程度だが、もっぱら男と勘違いされているので、制服を着ていればバレなかった。
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