短編 | ナノ

 02



花束を持ち、教会の介添え人と、教会の赤いビロードを一歩一歩噛みしめながら、歩く。


視線の先には、白いタキシードを着た愛しい彼。
神父さんの前で、じっと私を待っている。
強張った肩は、少し緊張しているからかな。


祭壇に上がるとき、彼が手を取ってくれて、耳元でそっとささやいた。


「――……綺麗だよ」と。思わず頬が染まった。アナタもタキシード姿、カッコいい、と返そうと思ったが、上手く声にならなった。


神父さんが私達の前に来て、誓いの儀式が始まった。長い誓いの言葉を述べる。


浮き立った心を落ち着かせるには、十分な時間だった。


「では、誓いのキスを」


神父さんが聖書を閉じ、向き直るよう手で指示する。



彼の手で、花嫁のベールが解かれる。



――……彼はなんて反応するだろう?


「お前は――……!?」


幸せな顔が、一転。彼の顔が歪められた.


私は、思わず、ふ、と笑ってしまう。


「どうしたの? 誓いのキスをしましょう」
「誰が―――……ぁ……?」


怒りと羞恥で染まった彼の顔が固まる。顔色が、青白くなり、息が荒くなっていく。わたしの純白のドレスが赤く染まっていた。神に仕える神父さんは、黙って事を見ていた。


「な、んで……」
「わたし、幸せなお嫁さんになりたかった。アナタを愛していたわ。だから、アナタの裏切りが許せなかった」


信じられない、というような顔をする彼に淡々と告げる言葉。そして、にっこりと笑う。


「ねえ、わたし、綺麗でしょう? 赤も好きなの」
「たす、け……ぁが……」


彼の腹部を刺していたナイフを捻って抜く。びちゃ、と返り血が付着すのに構わず、抜いては刺し、抜いては刺しを繰り返した。


「…………っ!」
「もう、死んでいます」


それを止めたのは、神父さんだった。わたしの手を強く握り、彼の腹部からナイフを抜かせた。彼は、祭壇からモノのように落ちて行く。わたしのドレスは純白から赤黒い血の色に変色していた。






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