06

黙れ!と犯人がもう一度銃を撃ったにも関わらず、真也は千百合を気にしつつ我慢出来ずに「田村さん!!」と叫んだ。


「えっ、平城!? なんでここに!」
「は!? 高坂!? 高坂! なんで!!?」


沙弥は人質になったにも関わらず、焦りも見せずいつもの調子だった。逆に、小虎は千百合が人質になっていることに驚き、なぜ千百合と平城がここに居るのか困惑していた。


「黙れっていうのが聞こえないのか!」
「……―――っ」


千百合と沙弥に銃を突きつけられ、小虎と真也は黙る。千百合の表情は相変わらずピクリとも動かないので、焦りや恐怖は分からない。また沙弥は落ち着いていたが、背中にじっとりと嫌な汗をかいていた。


いきなり銃で脅して来たのは覆面を被った男二人組――中肉中背だが筋肉質。16にして修羅場を何度も潜ってきた沙弥には、銃の扱い方から――グリップの握り方、安全装置の付け方などから、二人が手練れだと分かった。


「高坂千百合、今すぐ解放されたかったら自分の家に電話して、一億用意して欲しいと頼め」


男は千百合に静かに命令する。沙弥と平城は「一億」に目を丸くする。目の前の少女はそんなに金持ちなのかと、怪訝な顔をしていた。小虎一人は「高坂が目当てかよ……」と呟く。


千百合は――ここらを仕切る高坂組の一人娘。家柄的にも、金に困ることのない生活を送っている。そんな彼女が、護衛もつけずフラフラ歩いていたら、真っ先に狙われるのは当たり前だ。


「わかったわ……わたしが目当てなら、ここに居る人は関係ない。…わたしをどこかに連れていけばいいでしょう」


「高坂!何言って……!」


「……黙れ」


銃を突きつけられた小虎が言葉に詰まる。瞬間、声音が大人しかった千百合が豹変する。


「――やめて。彼は関係ない。彼を撃つなら、わたしも舌を切って自殺するわ」
「おいおい……コイツ彼氏か。お熱いことで……」



くくくっ、と笑う男に小虎と沙弥と平城に、嫌悪が沸き上がる。一歩として動けない、小虎と平城は歯噛みする。


「……人質ならわたしでいいでしょう。あの子は離して」
「いざって時に、男の人質も必要でな」


そう言った瞬間、「田村さんは女の子だよ!!」「田村は女だ!」と男二人から否定が入った。


「え……」


沙弥を抑えている犯人が沙弥を見た。沙弥の顔を見て視線を下に向けしばらく見て……「胸がない……」とボソッと言った瞬間、沙弥の堪忍袋がブチッと切れた。



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bkm



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