08

「おい……高坂離せよ。もしお前が恐喝で捕まって軽い罪に問われても、そのあと高坂組の若頭が沈めにくるぞ!?」
「山月くん、それってどういうこと!!?」
「あー……最近、太平洋側でドラム缶に詰められた人間が発見されたっていうしなあ…」
「そして田村さんはなんでそんなこと知ってるかな!?」


男を説得したいのか分からない言い合いに焦れた男は「良いか!次何か言ったら、本当に撃つ」と脅しをかけるが――。


「そう……みんな、みっふぃーちゃんになります、おくちばってんさんです」
「「ぶふっ!?」」


千百合の緊張感のない発言に、小虎始め沙弥と平城の腹筋が崩壊する。


「お前……!」
「……撃てるなら、うちなさい」


千百合がキリッと言った……――ように見えるが、小虎は気づいた。千百合の血の気が引いている。それに……口調が敬語混じりになっている。あれは千百合の顕著な変化だ。――照れた時や緊張した時に顕れる、変化。


小虎はまずい、と思った。千百合は本当は恐いのだ。恐怖しているからこそ、パニックになるまいと無駄口を叩いている。今言った「撃ってみろ」は強がりだった。……早く、助けなければ……ただ小虎は無力だった。


彼女を劇的に助ける力も、方法も、何も無い。銃を持っている相手に立ち向かえるほどの度胸もない。無力感が小虎を貫く。


「俺は…何も出来ない……クソッ」
「……」


――その呟きを拾ったのは、近くに居た真也。彼は小虎の正義感は良く知っていた。彼が自分の限界を知っており、だからこそ他人を頼り解決する。それは彼の――力。目の前のことに尽力し人力を得た力。決して無力じゃない。


真也もまた、その姿に――突き動かされる。


「俺が――なんとかするよ」
「え?」


「化け物」の彼を怖がらず、「友達だろ」と言ってくれた彼のために、彼女を救う。



「――ねぇ、もう離せ離さないの押し問答は、無駄だと思うんだ」
「さっきからごちゃごちゃ――!」


――真也は男を真っ直ぐに見て、単純に動いた。単純に明快に、自分の「力」を使って物理的な解決をはかった。



バキッと――自分の拳で地面を殴り、地面を「割った」。直径一メートルほどのクレーターが出来、真也は男に向かって、にっこりと笑った。


「その子離さないと――こうなるけど?」




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bkm



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